大相撲春場所で110年ぶりに新入幕優勝を果たした尊富士(24=伊勢ヶ浜)に、土俵ではなくリング上で躍動する先輩からエールが送られた。鳥取城北高&日大出身の尊富士について、同じ相撲部で1学年上だったプロレスラーの石田有輝(25=DDT)がその素顔を明かした。学生時代から抜群の脚力を誇った尊富士は、当時から群れを好まずに自分のトレーニングに集中。〝大器〟の片りんを見せつけていたという。
14日目(23日)の取組で右足首の靭帯を損傷したものの、執念の強行出場で劇的V。5年間寮生活を共にした後輩の活躍に、石田は「めちゃくちゃ応援していたけど、まさか優勝するとは。不思議な感じだし、ビックリ」と笑顔を見せた。
尊富士は高校2年時のインターハイ団体戦で優勝している。当時の実力について、石田は「(尊富士は)強かったけど、高校でヒザをケガしてしまった。2年のインターハイは、今回みたいに出られるかわからない状態だったけど、土俵に上がって優勝を決めている。そういう気持ちの強さはある」。精神的にタフなのは当時から。一度覚悟を決めれば、意地でも土俵に上がる姿勢は同じだ。
学生時代からの活躍の裏には、人一倍の努力があった。石田は「僕は5、6人でトレーニングをしていたけど、彼は1人でもするし、多くても3人とか。稽古場では最後まで1人で残っていた。トレーニングが好きで、努力はしていると思う」と振り返る。
しかし、優勝後の会見では「正直、相撲は好きじゃない」とまさかの発言も。石田は「リアルでもあんな感じ。とがっているわけではないけど、クール。恥ずかしがり屋で、人見知りかも。あまり群れたがらないタイプで、2人で遊びに行くことが結構あった」と明かした。
尊富士は体重143キロの今も「50メートルは6秒台で走れる」と豪語し、220キロのベンチプレスを上げる怪力を持つ。石田は「昔から思っていたけど、筋肉質だし、足が速い。高校時代は鳥取砂丘で(走って)トレーニングをして、体が大きい人の中では(脚力が)ずば抜けていた」。
抜群の身体能力を生かしたスピード感のある押し相撲は当時からだった。石田は「昔から体が大きいのに立ち合いが異常に速かったので、一緒に稽古をするのがめっちゃ怖かった。馬力があるし、相手に何もさせないように押している。当時から相撲のスタイルは変わらないし、基本的にまわしは取らない」と明かした。
自身は昨年5月の「KO―D6人タッグ王座選手権」で勝利し、初めてベルトを戴冠。しかし、現在は腰椎椎間板ヘルニアにより、12月から欠場中。後輩の飛躍を受けて「僕は相撲を離れた人間だけど、相撲の後輩とか近しい人が活躍しているのを見ると、負けられないなと思う。こっちの世界に来た以上は、自分もそれぐらい輝きたい」と大きな刺激を受けていた。