故人が愛用していた遺品を棺(ひつぎ)に入れたいという希望は多い。しかし「燃えない」などの理由で自治体が副葬品として認めていない物が数多くある。アルミなど金属製が多いつえをはじめ、眼鏡や本など…。環境問題などから以前より厳しく制限されているようだ。(藤井沙織)
葬儀中でも木のつえを買いに
「木でできたつえ、ありませんか?」
喪服姿でつえの専門店「つえ屋」(本店・京都市)に駆け込む女性。事情を尋ねると、葬儀の最中に故人のつえを棺に入れられないと知り、慌てて店を探して買いに来たという。坂野寛(ゆたか)社長(58)は「この数年間で、同様のケースが複数回ありました」と話す。
店頭には木製のつえもあるが、一般に広く使われているタイプの「T字杖」は、強度を上げるため持ち手の接合部分に金属製のネジが使われている。ネジを使わず1本の木材を丸く曲げて持ち手を作った「ラウンド」タイプもあるが、かなり値が張る。
そこで、これまでは「苦し紛れにT字杖の外側の金具を外し、中にネジがあることを説明したうえで渡していました」と坂野社長。今年の夏、出席した葬儀会社の創業記念パーティーで一連の出来事を思い出し、「諦めた遺族も多いのではないか」と考え、葬儀用のつえの製品化を決めた。