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Sound Horizon、20年の軌跡の物語ライブは楽園のパラダイス 会場が異世界に包みこまれた3時間 | ORICON NEWS
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Sound Horizon、20年の軌跡の物語ライブは楽園のパラダイス 会場が異世界に包みこまれた3時間

 音楽クリエイター・Revoが創造した“物語音楽”を舞台上で再現するコンセプトの音楽ユニットであり、幻想楽団をうたうSound Horizon。物語性を有した独特な世界観の楽曲群でファンを魅了し続けてきたなか、メジャーデビュー20周年記念公演『Revo‘s Halloween Party 2024』を11月23日、24日に神奈川・ぴあアリーナMMで開催した。その初日は、2025年3月5日にリリースを予定している『ハロウィンと朝の物語』の世界からつながる、ユニットの20年の軌跡をひとつの壮大な物語として封じ込めた特別な夜に観客を誘った。

会場中が一緒に踊った「Halloween ジャパネスク ’24」

 Sound Horizonの20周年を祝う幸福な空気感に包まれた会場は、アリーナから4階席まで超満員。開演前の影アナで笑い声が起こり、YouTubeに練習動画がアップされていた「Halloween ジャパネスク ’24」の振り付けを会場一体になって復習。すっかり客席が温まったところで公演がスタートした。

 1曲目は、20周年記念作品Beyond Story Maxi『ハロウィンと朝の物語』1曲目に収録される「物語」。イントロの語りから大歓声が沸き起こり、バンドの重厚なサウンドにストリングスの音色が重なると、”ハロウィン関係者”ダンサーとともにステージのランウェイまで出て歌って踊り、いきなり会場のボルテージは最高潮。20周年を祝うパーティにふさわしい幕開けとなった。
 そこから「小生の地獄」「あずさ55号」など『ハロウィンと朝の物語』からの曲が続く。アップテンポのロックオペラから、劇パートと音楽が交じるミュージカル風のナンバーなど、繰り広げられる曲ごとに異なる世界観に圧倒されながら、それぞれの物語に没入していく。歌い手と語り手を中心に、バンドとストリングスによる緩急織り交ぜた奥行きのある演奏が、観客を『Revo‘s Halloween Party』の世界へと誘った。
 この日のパーティの語り手は、自身を小生と呼ぶ、謎の“ハロウィン関係者”。最初のMCで、突然ステージから客席へ降りると、ファンにマイクを向けて推しを聞いたり、アクセサリーをいじったりと会話をはじめ、観客との距離間をぐっと縮める。気づけば、会場中に一体感が生まれていた。

 特徴的な演出があったのは「約束の夜」。ステージで歌っていた少女(山崎杏)が倒れて会場が暗転すると、アリーナ席後方の客席にスポットが当たる。すると、そこにいたのは物語の登場人物が2名。会場がどよめくなか、ゆっくりと客席を縫ってステージまで歩き、少女を背負って曲を再開。ストーリーと音楽がシンクロし、その歌声が観客の心に沁みていった。
 また、「Sacrifice」では井坂泉月、灰野優子、ピコ、MIKIの美しいアカペラのハーモニーから曲がはじまる。バイオリンのメロディと4人の美声が重なるパートは、観客の心をヨーロッパの格調高いオペラの世界に誘った。

『進撃の巨人』主題歌で「イェーガー」大合唱

 中盤からはLinked Horizonの曲も挟み込まれた。アルバム『ルクセンダルク大紀行』からの「愛の放浪者(Vocalized Version)」では、寂しげなピアノのイントロから鈴木結女の歌唱を存分に聴かせ、歌謡曲調のメロディとバイオリンソロの響きが感情の琴線に触れる。
 また、『進撃の軌跡』からの「神の御業」では、灰野優子、井坂泉月、ピコ、山崎杏の4人とコーラス隊のみのアカペラで、聖歌の合唱のような神聖さの漂う歌声を響かせた。そんな中盤ではすでに、その音楽性の幅広さに観客の心は揺さぶられ続け、特有の世界観のRevo沼にすっかり引きずり込まれていた。
 そして、この日の会場がもっとも揺れたのが、ベストアルバム『進撃の記憶』からセットリストに選曲されたなかの1曲であり、TVアニメ「進撃の巨人」Season 1 前期オープニング主題歌「紅蓮の弓矢」。ステージのスクリーンにアニメシーンが映されながら、場内はライティングで真っ赤に染められた。
 炎を模したスティックライトを両手に持つダンサーが、まるで燃え盛る炎を振りかざすように激しく踊り、“ハロウィン関係者”の熱唱に応えるように観客もサビの「イェーガー」を大合唱。力が湧き上がるようなメロディと観客の熱気に会場が大きく揺れた瞬間だった。

 盛りだくさんの構成で、濃密な内容のパフォーマンスに圧倒された3時間は、瞬く間に過ぎ去った。最後の曲は「栄光の移動王国 -The Glory Kingdom-」。Revoの「みんなで一緒に歌いましょう。Sound Horizon国家斉唱!」の掛け声で会場中が声を合わせる。ステージと客席全員が心をひとつにして、この日の物語を締めくくった。

 振り返れば、出演者たちは何着もの衣装に着替え、歌とダンスと芝居でそれぞれの物語に会場を染めていた。われわれ観客にとっては、たくさんの物語のなかに身を置いて、そのメッセージを全身で浴び続けた最高の夜だった。

 Revoは最後に「充実した内容で駆け抜けた楽しいステージになりました。20年分の感謝を捧げます」とあいさつした。それは観客の気持ちも同じだろう。盛大な拍手は鳴り止まず、惜しまれながら幸せな時間の幕は閉じた。

20年の活動を経たいまだから打ち出せた物語

 幻想的な物語の音楽を紡いできたSound Horizon。Revoは、その時代や楽曲ごとに、さまざまな歌い手、語り手、踊り手、役者、演奏家とともに歴史を紡いできた。Linked Horizonも含め、常に新しい挑戦を繰り返し、表現の地平を切り拓いてきた20年の軌跡を、ひとつの物語として帰結させたのが、この日の公演だった。

 そこには、生死、光陰、愛憎、悲喜など人間の根源に帰する、相反する感情を揺さぶるメッセージがあった。会場の誰もが、それぞれの心の深淵にある何かに触れたはずだ。そしてそれが得も言われぬ喜びとなって湧き上がってきたに違いない。

 20年の活動を経たいまだから打ち出せたSound Horizonの物語が、新たな境地に到達した夜。その場と時間を共有した観客たちは、ここからつながるSound Horizonの次なる未来への予感を得たのではないか。

 観客が物語に入り込み、ステージと客席が一体となる豪華絢爛な総合芸術エンターテインメントショーは、次のステージへと向かって歩みはじめた。

取材・文/武井保之

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