「CGアニメに抵抗がある?それでも観る価値がある!」青春の美しさと心の痛みを描き出す『がんばっていきまっしょい』の魅力【前編】
P R:松竹
愛媛県松山市を舞台にした劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』には、筆者が見た瞬間に「伝えずにはいられない」と感じる何かがあった。これはただの青春スポーツものではなく、人生のど真ん中で感じる葛藤や成長、仲間と挑むことで得られる熱い一瞬が凝縮されている。青春を通して心に刻まれる「挑戦」というテーマが、心の奥底を静かに、でも確実に揺さぶってくるのだ。本稿では、アニメ化された今作の見どころを、筆者が何に胸を打たれたのかも交えながら深掘りしていきたい。
■なぜ、この青春を語らずにいられないのか?
令和の時代に入っても、挑戦する気持ちや夢中になる熱は不変だ。だからこそ、原作小説の持つ普遍的なテーマが新しい世代にも強く響き、満を持してアニメ化されることとなった。舞台は愛媛県松山市。ボート競技に挑む女子高生たちの姿を通じて、観る者は彼女たちと一緒に汗を流し、涙をこらえる瞬間を体験できる。
主人公・村上悦子、通称「悦ネエ」は、かつては周囲から慕われる姉御肌だった。しかし、成長するにつれて次第に自分の限界を意識し、情熱を失ってしまう。そんな彼女が、転校生の高橋梨衣奈(リー)の熱い情熱に触れ、半ば強引にボート部の再建に巻き込まれるところから物語が動き出す。ボート競技を通じて、悦ネエは再び自分の内面と向き合い、仲間たちからの刺激を受け、少しずつ情熱を取り戻していく。
このボート部再建の挑戦には、ボート競技特有の「一艇ありて一人なし」の精神が根底に流れている。どれほどの困難があろうと、全員の力が一つにならなければ前に進まない。悦ネエが仲間と共にオールを握り、ひとつの目標に向かって突き進むシーンには、かつて自分も夢中になったことを思い出さずにはいられない。そして、挑戦に向き合う彼女たちの姿が、「仲間と一緒だからこそ達成できる青春の強さ」を教えてくれるのだ。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■挑戦と挫折、そして成長—胸に刻まれる瞬間の数々
『がんばっていきまっしょい』は、決して甘い青春物語ではない。廃部寸前のボート部を復活させようとする少女たちは、初心者であり、基本の練習から苦しいトレーニング、大会での敗北など、多くの壁に直面する。特に筆者が感動したのは、悦ネエが挫折と向き合うシーンだ。挑戦の先にある現実や、自分が思うように成長できない苛立ちなど、苦しい気持ちに直面しつつも、それでも彼女は仲間と共に進み続ける。
そして、初めて大会で成果を実感したときの悦ネエの表情には、競技の厳しさを知った者だけが味わえる達成感が溢れ出し、筆者も胸が熱くなった。彼女たちが目指すのは単なる勝利ではなく、「仲間と共に掴む未来」だ。その一歩一歩を乗り越えていく悦ネエたちの姿が、青春の持つかけがえのない瞬間を鮮やかに映し出している。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■個で挑む『ブルーロック』、共に挑む『がんばっていきまっしょい』
「挑戦と成長」をテーマにした昨今の人気作品で、対照的な描き方をしているのがサッカー漫画『ブルーロック』だ。エゴを重視し、他人との協力を捨ててでも自分だけを高め、ゴールを目指せと教えられる物語は、サッカーというチームスポーツの枠を超えた「個人の挑戦」にフォーカスしている。登場人物が「俺が一番だ!」と叫び、ただひたすらに自分を高めていく姿には強烈なカタルシスがあるが、同時に「孤独な挑戦」の代償も突きつけられる。
一方、『がんばっていきまっしょい』は、仲間と心を一つにして挑むことの意味と美しさを描く。ボート競技は、一人ひとりの努力だけでなく、全員が同じタイミングで動かなければ進まない、まさにチームワークがすべてを決めるスポーツだ。『ブルーロック』のようにエゴを押し通す場面はなく、むしろ「仲間と一緒だからこそ乗り越えられる」瞬間が描かれている。例えば、ボートのリズムが少しでも乱れれば前に進むことができない。この競技特有のルールが、青春における「他者との共感と協力」を強く際立たせている。
悦ネエが仲間たちと心を通わせ、チームとして一体感を高めていく過程は、観る者にとっても「自分も仲間の一員になりたい」という感情を呼び覚ます。筆者はここに、他の競技とは違った「共に進む挑戦」の美しさを見出さずにはいられなかった。
『ブルーロック』のように「個の挑戦」を重んじる物語もまた魅力的だが、『がんばっていきまっしょい』が描く「共に挑む喜びと葛藤」は、観る者に新たな視点を提供してくれるはずだ。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■一心同体のボート競技が描くチームワークの力
この作品では、選手たちが息を合わせてオールを漕ぐシーンや、水面に広がる波しぶき、空気の張り詰めた緊張感などがリアルに描かれ、観客も彼女たちの一員であるかのように臨場感を味わうことができる。観る者に、まるで彼女たちと同じボートに乗っているかのような一体感が生まれる。
さらに、個々のキャラクターたちがチームのために自分の役割を果たし、互いを支え合う姿が強調されている。ボート競技において、選手一人ひとりの小さなミスがチーム全体に影響するように、全員が互いの動きを感じ取り、同じリズムで漕ぐ瞬間にはチームとしての完成度が試される。勝ち負けだけではない、仲間と共に挑むことの喜びが、心に深く染み入る。
『がんばっていきまっしょい』のボートシーンは、単に競技の一環として描かれるのではなく、仲間と一心同体となり、共に目標へ向かって進む力強いチームワークの象徴として、観る者に強い感動を与える。この作品は、青春とは単独の挑戦ではなく、仲間と支え合い、共に歩むことの大切さを教えてくれる、まさに「一艇ありて一人なし」の精神が深く刻まれているのだ。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■青春の輝きと挑戦の鼓動が心に響く
『がんばっていきまっしょい』は、青春の喜びや苦しさ、そして仲間と共に何かを成し遂げる素晴らしさが凝縮された感動作である。個性豊かなキャラクターたちがボート競技を通じて成長していく姿が、心を熱く揺さぶり、青春の記憶を呼び覚まし、「今、自分にとっての挑戦は何か?」と問いかける。その青春の一瞬一瞬が、愛媛の美しい自然とともにスクリーンに映し出されるとき、筆者はこの物語が持つ真の力を感じずにはいられなかった。
後編では、CGによる映像美やアニメーション制作のこだわりに焦点を当て、物語を彩る背景と制作陣の情熱に迫る。映像と物語がどのように融合し、この青春ドラマに息吹を与えているのか、その魅力を存分にご堪能いただきたい。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』は大ヒット上映中。
(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
文:吉野庫之介/クランクイン!編集部
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