『ef – a fairy tale of the two.』などで知られる人気エロゲーブランド・minoriが本日、同社の公式サイト上で『ソフトウェア制作終了のお知らせ』と題した声明を発表した。
要はエロゲー制作活動をやめるということだ。
声明によると理由が4つある。1つは「お客様とのお約束を守ることが出来なかったから」だ。これは声明にもあるが、最新作『その日の獣には、』が発売延期したことを指している。
確かにminoriの代表である酒井伸和氏はかつてインタビューをさせてもらった際に、エロゲー業界では半ば常識である“ゲームの発売延期”について、かなり否定的な意見を持っていた。実際、minoriは現在のブランド地位を築いてからは発売延期をしたことがなかった。そのminoriが発売延期をしたのだから、よっぽどだったのだろう。
2つめが世の中の求めていることと、ブランドとして作りたいものの乖離が発生していることを挙げている。「我々は「求められる」作品を作れるほど器用ではない」とまで声明にはある。
この点に関しては酒井氏との話の中で、ユーザーが求めるゲームの長さと自身の考えにずれが生じていることをよく吐露していた。minoriの作品はどちらかというと物語が「太く短いもの」であったかもしれないが、ユーザーは物語が細くなっても長いものを好むようになったかもしれない、と。こうしたずれが少しずつ積み重なったのだろうか。
また、2012年に発売した『すぴぱら』の商業的失敗以降、作品の傾向がminoriらしさを残しつつもこれまでとは別な方向へ進んでいた。それまでのminoriといえば、エロゲーとは思えないほどの高い物語性をみせてくれるブランドのイメージが強かったが、2012年以降はエロゲーの原点回帰ともいえる“エロ”も強く押し出すようになっていったのだ。この流れも、ユーザーの求めるものを提供しようと思考錯誤した結果なのかもしれない。
3つめに、スタッフがいまであれば他で活躍できるかもしれないということを挙げていた。近年のminoriは、業界の活性化も視野に入れて新人の声優やシナリオライターを積極的に起用していた。また酒井氏自身、クリエイターがライトノベルやアニメに進出することで業界の新たな可能性につながると期待していた。「minoriという場所で得たものを他の場所で還元していくことは社会的に大事なことと捉えていますし、他の文化と融合させていくことが、発展的使命かと思います」という言葉は、実に彼らしい本心といえよう。
最後が、ブランドポリシーを曲げてまで存続さる意味を挙げている。minoriがminoriらしいまま終わらせられるのが、今ということなのかもしれない。
これまでBusiness Journalでのインタビューをはじめ、minoriないし酒井氏からは業界の問題から可能性まで多くを語ってもらった。酒井氏自身のキャラクターもあり、業界に強烈な皮肉を交えたこともあったかもしれない。しかし、崩れゆく業界をなんとか立て直そうとしていた姿は本物だった。それゆえ今回の発表はかなりの衝撃だ。
斜陽産業と呼ばれて久しい中、売れるゲームを作り続けるブランドもまだまだ存在し、一般知名度を高く得たブランドがあるのも事実。しかしその一方で、身を引かざるを得ないブランドが増加し続けているのも、まぎれもない事実だ。
エロゲーないし、美少女ゲームはある意味、日本のオタク文化の礎となっている。その文化を支えたブランドがまた1つ消えていく。
我々はこの事実をどうとらえるべきか。minoriの解散に伴い電気外祭りも終了してしまうらしい。このままエロゲー/美少女ゲームは“オワコン”となってしまうのか。それとも起死回生の何かがあるのか。果たして――?
(文=Leoneko)