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犬の胃腸トラブル、どんなものが多い? 病院での対応と家庭でできる健康管理[インタビュー] | 動物のリアルを伝えるWebメディア「REANIMAL」

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犬の胃腸トラブル、どんなものが多い? 病院での対応と家庭でできる健康管理[インタビュー]

京浜どうぶつ医療センター院長の林幸太郎 獣医師(右)
  • 京浜どうぶつ医療センター院長の林幸太郎 獣医師(右)
  • 京浜どうぶつ医療センター院長の林幸太郎 獣医師
  • 京浜どうぶつ医療センター
  • 京浜どうぶつ医療センターにはトリミングサロンも併設されている
  • 人間用の解熱剤を誤食してしまうケースが増えているという(画像はイメージ)
  • 2種類以上の症状がある場合は要注意(画像はイメージ)

そろそろ梅雨入りの季節。人間同様、動物たちも季節の変わり目には体調を崩すことが多い。ペットに多い胃腸トラブルについて、消化器系疾患に詳しい京浜どうぶつ医療センター(東京都品川区)の林幸太郎院長に聞いた。今回は、犬に多い嘔吐や下痢などについて紹介する。

比較的下痢や嘔吐の多い犬

----:犬は下痢や嘔吐をしやすい印象がありますがいかがしょう?

林幸太郎院長(以下、敬称略):獣医師(の得意分野)によって症例数に若干の違いはあると思いますし、私は消化器系の診察が多い傾向はあります。でも、下痢と嘔吐は動物病院に来院する症状の中で、かなりの割合を占めています。

----:具体的には?

林:大腸炎が多いです。人間でもよくある下痢と同じようなイメージです。

----:異物を飲み込む事故はありますか?

林:数としてすごく多いわけではありませんが、処置が大変なことが多いので印象には残ります。また、チョコレートなどの食べてはいけない物の誤食も常に一定数あります。

コロナ禍の影響で解熱剤の誤食が増加

----:どんな物の誤食がありますか?

林:人間の薬を飲んでしまうケースが増えました。新型コロナのワクチン接種を受けた際、副反応に備えて解熱鎮痛剤を処方されることがあると思います。飼い主さんの薬をわんちゃんが飲んでしまったということがあります。

----:薬を飲んでしまった時は、どんな処置をするのですか?

林:(飲み込んで)すぐに来ていただけた場合は、まず吐かせます。ただ、薬の成分は胃に入ると30分から1時間で腸に流れ込みます。吸収してしまった場合、点滴などで少しでも速く薬が代謝(≒分解)される処置をします。解熱鎮痛剤は量が多いと胃に穴が開くこともあるので、胃粘膜を保護する薬も投与することがあります。

----:飼い主はどうしたら良いでしょうか?

林:何をどれだけ飲んだかを聞かせていただけると助かります。電話で、「この薬を何錠飲んでしまった」と言っていただければ、「すぐ来てください」とか「急いで!」とお話しできます。場合によっては、「あまり焦らなくても良いかもしれませんが、早めに来てください」といった判断もできます。

----:来院前にお電話した方が良いですか?

林:はい、病院に向かいながらでも良いと思います。前もって必要な準備ができるので、病院に着いた時に処置をすぐに始められます。重篤な時ほど、メリットは大きくなります。

人間用の解熱剤を誤食してしまうケースが増えているという(画像はイメージ)人間用の解熱剤を誤食してしまうケースが増えているという(画像はイメージ)

重症化しやすい膵炎は正確な診断が可能に

----:誤食は事故ですが、病気で多いのは?

林:人間で“腸活”が流行っていますよね。ヒトの場合、年齢とともに消化管細菌のバランスが悪くなることが分かっています。動物も高齢になると、お腹が弱くなって下痢や嘔吐が増える傾向があると思います。

----:先生が研究されておられる膵炎(すいえん)は、シュナウザーに多いと聞きますが。

林:必ずしも決まった犬種がかかるわけではありません。今入院している子も、4歳のチワワです。ただ、シュナウザーには遺伝性の高脂血症が多いことが報告されています。脂は膵臓を活発に働かせる作用がありますから、血液中の脂の多さがシュナウザーに膵炎が多い1つの要因だろうと思います。

----:犬も歳をとったらあっさりした食べ物のほうが安心ですね。犬の膵炎は増えているようですが…。

林:と言うよりも、診断できるようになったと言うべきだと思います。20年ほど前に「膵特異的リパーゼ」というマーカーが見つかって、診断率が上がりました。昔は本当に重篤な膵炎しか見つけられなかったのが、マイルドなものも見つけられるようになって診断数が増えています。

----:診断できるようになったのはありがたいですね。

林:そうですね。より効果的な治療法や良好な予後につながります。重症化するリスクが高い病気なので、気をつけた方が良いと思います。

2種類以上の症状がある場合は病院へ

----:犬種や年齢を問わず病気になることはあるわけですが、急いで診てもらった方が良さそうな時の目安はありますか?

林:水を飲んでも吐くような時や、繰り返し嘔吐する場合は診てもらった方が安心です。下痢の場合は、出血性腸炎といって便に血が混じることもありますが、鮮血(真っ赤な血)が大量に出てくるようなら急いで病院に行った方が良いと思います。

それから、消化器のトラブルは色々な症状を出します。「2種類以上の症状がある時は早めに来てください」、とお話しています。例えば下痢と嘔吐、下痢と食欲不振、嘔吐と食欲不振、それから食欲不振でどんどん痩せてしまうとか。

逆に、軽い下痢をしたけれど食欲はあるという場合は、少し様子を見ても良いかもしれません。嘔吐も、犬はご飯をガツガツ食べた後で吐いてしまうことがあります。元気で食欲があり、症状が続かないようであれば経過観察で済むケースもあると思います。

2種類以上の症状がある場合は要注意(画像はイメージ)2種類以上の症状がある場合は要注意(画像はイメージ)

----:犬は嘔吐や下痢の時に血が混じることが多いような気もしますが。

林:消化管からの出血は、人間よりも多いですね。鮮血が大量に出るような状態は別ですが、嘔吐が続くと吐しゃ物に少量の血が点々と混じっていたり薄いピンク色をしていたりするのはあまり珍しいことではありません。腸炎の場合も、主な症状として下痢のほかに少量の血が混じる鮮血便、ゼリー状のものがつく便というのが教科書にも書いてあります。慌てず落ち着いて、動物病院に相談してください。

いずれにしても、わんちゃんのことを一番よくご存じなのは飼い主さんです。“何か普段と違うな”、と感じた場合は獣医師にご相談いただくのが安心だと思います。

----:季節的な傾向はありますか?

林:あると思います。過去の経験から、12月から1月に胃腸炎と膵炎の症例が増えます。(気温など)気候によるものなのか、クリスマスやお正月など人間の事情が影響しているのかは不明ですが、恐らく両方の理由でしょう。美味しい食べ物をもらうことがあるでしょうし、人がたくさん訪ねて来るストレスも消化器疾患につながっているかもしれません。人間では、「お腹が冷える」という言い方をしますが、気温の影響もあると思います。

飼い主ができる体重チェックと食事管理

----:一般の飼い主が、日常的に気をつけるポイントは?

林:体重のチェックは大切です。月に1回でも構いません。体重の記録をつけておくことが有効です。慢性疾患の多くで、痩せることが最初の兆候として現れます。体重は飼い主さんも気付きやすいので、継続的に確認しておくと安心です。

また、便や尿が「おかしいな」と思った時は、写真を撮っておくことをお勧めします。診断の役に立つことがあります。情報が多ければ多いほど正確な診断が可能です。色々な記録を残しておくことが、わんちゃんの健康につながると思います。

----:最後に飼い主さんへのアドバイスをいただけますか?

林:食事は大切です。インターネットなどで情報がたくさん得られますが、間違った認識もあります。人間でもそうですが、“何となく高タンパク・低脂肪が受ける”ような風潮を感じます。炭水化物が少ないフードの方が長生きするような印象を与える表現も見られます。でも犬の場合、過剰な高たんぱく低脂肪に“シフトし過ぎない”ことも大切です。その子、その子に合った食事があるので、獣医師とじっくり相談してみることをお勧めします。

京浜どうぶつ医療センター院長の林幸太郎 獣医師京浜どうぶつ医療センター院長の林幸太郎 獣医師


食事管理や体重のチェックなど、愛犬が健康でいられるために飼い主ができることも少なくないようだ。信頼できる専門家のアドバスのもと、適切なケアを行うことで犬たちが長く元気に過ごせることにつながる。病気の治療だけでなく、日常的な問題についても気軽に相談できる、かかりつけの獣医師を決めておくのも大切だろう。

林幸太郎:博士(獣医学)/獣医師
消化器疾患を中心に、ペットの性格や生活環境に応じた適切な検査・治療を行うことを信条とする。病院で経験する多くの症例に基づき、研究論文の執筆や海外での発表なども行う。ファニメディック動物医療グループが開院した京浜どうぶつ医療センターの院長をこの3月から務める。愛犬はトイプードルのミッキーくん。

《石川徹》

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