NEC、業務システムにおける大規模データ予測を自動化する「予測分析自動化技術」を開発
~複数のデータベースを短時間で高精度に分析~
2016年12月15日
日本電気株式会社
NECは、最先端AI技術群「NEC the WISE」(注1) の1つとして、業務システムで幅広く使われるリレーショナルデータベースでの大規模データ予測分析プロセス全体を完全自動化する「予測分析自動化技術」を開発しました。
現在、複数のデータベースから構成されるリレーショナルデータベースを分析する際、熟練のデータサイエンティストによるデータベース間の複雑な関係性の発見や関連づけ、機械学習による予測モデルの調整などに多大な工数を要しています。一方で世界的な熟練データサイエンティストの不足により、急増する高度なデータ分析ニーズに応じて迅速に大規模データ分析をするためには、非熟練者でも利用可能な、容易かつ高精度な分析手段が求められています。
本技術は、「分析に有効なデータ項目(特徴量)の抽出・設計から、最適な予測モデルの作成まで」の一連のプロセス自動化を実現する技術です。これにより、データ分析に関する高度なスキルがなくても、短時間に熟練データサイエンティストと同等以上の精度で予測分析が可能となります。
本技術を用いて、株式会社三井住友銀行、株式会社日本総合研究所、NECで共同実証 (注2)を行った結果、専門分析者により2~3か月かかる分析作業が、精度を維持したまま1日に短縮できました。NECは、本技術を企業が自社でビッグデータ分析を行えるサービスとして、2017年度の提供を目指します。
NECは社会ソリューション事業に注力しており、本技術を活用したサービス事業の一層の拡大と高度化を図ると共に、分析ソリューションを通して、お客様の新たなビジネス創出や企業価値向上に貢献します。
背景
現在、企業では、変化の激しい事業環境や多様な顧客のニーズをいち早くかつ正確に把握し、企業経営に反映させる取り組みが行われています。蓄積された膨大なデータの分析による新たな価値の発見と創出が、企業の成長に大きく影響します。一方、世界的にデータ分析専門家が不足する中で、急増する高度なデータ分析ニーズへの迅速な対処が喫緊の課題となっています。
NECは、2012年にビッグデータに混在する多数の規則性を自動で発見する分析手法「異種混合学習技術」(注3)を開発して以来、データ分析の前処理技術として、「特徴量自動設計技術」(2015年発表、注4)を開発するなど、熟練のデータサイエンティストが人手で行っていた高度な作業(データの関係性発見、特徴量の抽出・設計から分析モデル作成まで)を高精度に自動化する研究開発を進めてきました。
今回開発した「予測分析自動化技術」は、これらの技術を発展させ、リレーショナルデータベースの大規模データに対する予測分析を完全自動化する技術です。
新技術の特長
- 「特徴量自動設計技術」を強化し、リレーショナルデータベースから特徴量を自動で発見
2015年に発表した「特徴量自動設計技術」を強化し、業務システムで幅広く使われるリレーショナルデータベースから、特徴量を自動で設計します。
企業の重要な経営情報は一般的に複数のテーブルに分類整理され、リレーショナルデータベースシステムに保存されています。分析対象となる複数のデータベースの関係性から、予測に有効なデータ項目の組み合わせ(特徴量)の仮説をAIが高速で探索し発見します。このプロセスで必要となる膨大な数の検索式(クエリ)の生成もシステムが自動で行います。
これにより、分析経験やデータに対する知見に頼っていた特徴量の仮説立案や、データベースを操作して特徴量を作成する多大な作業が不要となり、分析を大幅に短期化・省力化することができます。また、人手による分析をはるかに越える大量の仮説探索を短時間で実行できるため、分析結果の高精度化や、人が気づかない新しい知見の発見も可能になります。 - 「予測モデル自動設計」により複数モデルから最適なものを自動で選択
特徴量のデータをもとにNEC独自の「異種混合学習」のほかに、ロジスティック回帰、決定木といった様々な機械学習手法を用いて作成された大量の予測モデルから、ユーザーが目的とする分析結果に最適な予測モデルを選択、或いは組み合わせます。また、予測モデルで算出された予測値について、予測根拠(なぜそのような予測になるのか)も提示します。
予測根拠が把握できることで、ユーザーが納得性を持って状況に応じた適切な計画・判断の実行を可能にします。
今回、直観的に操作できるGUIを開発し、画面の指示に従う簡単な操作で、多大な工数がかかっていたデータの特徴量探索、予測モデル作成を実現しました。これにより、データ分析に関する高度なスキルがなくても、短時間に熟練データサイエンティストと同等以上の精度で予測分析が可能になります。
本技術は、企業の重要な経営情報などが保存されている大規模なデータについて、新たな潜在ニーズの発見に基づいた戦略立案、仮説検証、施策実施など迅速な事業判断に貢献します。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注1)
「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。"The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。
・プレスリリース NEC、AI(人工知能)技術ブランド「NEC the WISE」を策定
http://jpn.nec.com/press/201607/20160719_01.html
・NECのAI研究
http://jpn.nec.com/rd/crl/ai/ - (注2)2016年12月15日発表プレスリリース
「AI技術を活用したデータ分析自動化の実証実験について」 - (注3)異種混合学習技術 2012年6月22日
『NEC、ビッグデータに混在する多数の規則性を自動で発見する技術を開発』
http://jpn.nec.com/press/201206/20120622_02.html
2014年6月19日
『NEC、ビッグデータに混在する多数の規則性を自動で発見する「異種混合学習技術」を強化』
http://jpn.nec.com/press/201406/20140619_01.html - (注4)特徴量自動設計技術
2015年8月18日
『NEC、ビッグデータの高精度な予測分析に必要な期間を従来比1/3に短縮する「特徴量自動設計技術」を開発』
http://jpn.nec.com/press/201508/20150818_02.html
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