雪
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雪(ゆき)に関する引用と諺。
万葉集
[編集]- 藤原夫人に賜ふ御歌
我が里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後(のち) -天武天皇
- 返し
我が岡の龗(おかみ)に言ひて降らしめし雪の摧(くだ)けしそこに散りけむ -藤原夫人(藤原鎌足女)- 天武天皇の後宮の藤原夫人が大原(今の奈良県明日香村小原)に里下りしていたときの詠。「龗(おかみ)」は雨や雪を掌るとされた水神。『万葉集』巻二・103,104
- 返し
- 我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば -山部赤人
- 『万葉集』巻六・944
- 新(あらた)しき年の初の初春の今日降る雪のいや重け吉事(よごと) -大伴家持
- 『万葉集』巻二十・4516。『万葉集』最後の一首である。天平宝字3年(759年)正月一日、因幡国庁での詠。
富士の雪
[編集]- ……天の原 振り放け見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくそ 雪は降りける……
反歌
田子の浦ゆうちいでてみれば真白にそ不尽(ふじ)の高嶺に雪は降りける -山部赤人- 『万葉集』巻三・317,318。小倉百人一首では「田子の浦にうちいでてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ」。
- 不尽(ふじ)の嶺(ね)に降り置く雪は六月(みなづき)の十五日(もち)に消ぬればその夜降りけり -高橋虫麻呂
- 『万葉集』巻三・320
- 時知らぬ山は富士の嶺いつかとて鹿の子まだらに雪の降るらむ -在原業平
- 『伊勢物語』・『新古今和歌集』雑中。
雪月花
[編集]- 宴席詠雪月梅花一首(宴席に雪・月・梅花を一首に詠める)
雪の上に照れる月夜に梅の花折りて送らむはしき子もがも -大伴家持『万葉集』巻十八
古今和歌集
[編集]- 君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ --光孝天皇
- 『古今和歌集』春上。藤原定家の『小倉百人一首』にも収録。
- 霞立ち木の芽もはるの雪降れば花なき里も花ぞ散りける -紀貫之
- 『古今和歌集』春上。
- 雪降れば冬こもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける -紀貫之
- 『古今和歌集』冬。
- 雪の内に春はきにけりうぐひすのこほれる涙今やとくらむ -二条后(藤原高子)
- 『古今和歌集』春上。
- 白雪のところもわかずふりしけば巌にもさく花とこそ見れ -紀秋岑
- 『古今和歌集』冬。
- 雪の降りけるを見てよめる
雪ふれば木ごとに花ぞさきにけるいづれを梅とわきてをらまし - 紀友則- 『古今和歌集』冬。「木ごと」(木毎)は、梅をあらわしたもの。漢詩の技法である離合詩を採り入れた和歌。
- 冬ながらそらより花のちりくるは雲のあなたは春にやあるらむ -清原深養父
- 『古今和歌集』冬。
- 参照:我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも -大伴旅人
『万葉集』巻五・822
- 朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪 -坂上是則
- 『古今和歌集』冬。藤原定家の『小倉百人一首』にも収録。
中古
[編集]- 久しう罷り通はずなりにければ、十月ばかりに雪の少し降りたる朝、言ひ侍りける
身をつめばあはれとぞおもふ初雪のふりぬることも誰にいはまし -右近- 『御撰和歌集』巻十四・恋六。
- 冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず。-清少納言三巻本系『枕草子』
- 雪のいと高う降りたるを 例ならず御格子まゐりて 炭櫃に火おこして 物語などして集りさぶらふに(宮)「少納言よ 香炉峰の雪いかならむ」とおほせらるれば 御格子上げさせて御簾を高く上げたれば 笑はせたまふ。-清少納言
新古今和歌集
[編集]- 駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮 -藤原定家
- 『新古今和歌集』冬。
- みよしのは山もかすみて白雪のふりにし里に春は来にけり -藤原良経
- 『新古今和歌集』春上。巻頭歌である。
- かきくらし猶ふるさとの雪の中にあとこそ見えね春はきにけり -宮内卿
- 『新古今和歌集』春上。
- 山ふかみ春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水 - 式子内親王
- 『新古今和歌集』春上。
- うすくこき野辺のみどりの若草に跡までみゆる雪のむら消 -宮内卿
- 『新古今和歌集』春上。「若草の宮内卿」の異名の由来。
その他
[編集]- これがまあつひのすみかか雪五尺 -小林一茶
- 雪ながら山もとかすむ夕かな -宗祇
行水遠く梅にほふ里 -肖柏- 『水無瀬三吟百韻』。
- いくたびも雪の深さを尋ねけり -正岡子規
- ……
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
…… -中原中也「汚れつちまつた悲しみに……」『山羊の歌』より - 雪は天からの手紙である。 -中谷宇吉郎
- 孤舟蓑笠の翁,獨り釣る寒江の雪。 -柳宗元、『江雪』
- 孤舟蓑笠翁,獨釣寒江雪。