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CA125

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
CA125
医学的診断
Carbohydrate Antigen 125、Mucin-16、MUC16
MUC16/CA125の構造
目的 卵巣癌、子宮体癌、などの腫瘍マーカーとして、診断の補助、治療効果判定、経過観察に用いられる。

CA125(糖鎖抗原125、: carbohydrate antigen 125)は、主に卵巣癌子宮体癌(子宮内膜癌)に用いられる腫瘍マーカーである。

概要

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CA125は、ヒト卵巣漿液性嚢胞腺癌の培養細胞を免疫原とするモノクローナル抗体OC (Ovarian Cancer) 125で測定される抗原であり、ムチン(高分子性糖タンパク)のMUC16(Mucin-16)のコア蛋白部分と考えられている[※ 1]。CA125は、健常人の漿膜、卵管、子宮内膜を含む多数の臓器に分布している[1]

臨床的意義

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基準値と生理的変動

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CA125の基準値(癌の存在を疑うカットオフ値)としては、35 U/mL超が一般に用いられているが、性周期・年齢・性差の影響が大きく、注意する必要がある[2][3]

閉経前の女性では、性周期による変動があり、月経に伴い上昇する。特に子宮腺筋症合併例では100 - 300U/mLの高値を示すことがある。月経中の採血は避けるべきである[4][3]。また、妊娠初期に一過性に上昇、13週ごろまでに基準値内に回復し、分娩直後に一過性に上昇することがある。基準値として、65 U/mLを使用すると、性周期・妊娠・良性疾患による偽陽性の大部分を除外することができる[2]

男性、および、閉経後の女性では低値となり[※ 2][※ 3]、基準値は 25 U/mL未満である[3]

悪性疾患におけるCA125高値の意義

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婦人科癌

CA125は卵巣癌の約80%で陽性となる。特に、漿液性腺癌や類内膜腺癌で陽性率が高い[5]。また、子宮内膜癌・その他の婦人科癌(原発性腹膜癌も含む)でも高頻度に陽性となる。CA125は、婦人科癌の診断の補助、および、治療の効果判定や治療後の経過観察に有用であり、婦人科領域で最も頻用される腫瘍マーカーであるが、癌の早期発見(健常人のスクリーニング)には感度・特異性が不十分であり、使用できない。

CA125陽性率[6] StageⅠ StageⅡ StageⅢ StageⅣ 良性腫瘍
卵巣癌 22% 71% 78% 100% 14%
婦人科系以外の癌

消化器癌、および、次項の胸膜・腹膜に浸潤した進行癌では上昇が見られるが、腫瘍マーカーとしては頻用されない。

癌の胸膜・腹膜浸潤

悪性腫瘍におけるCA125高値は、原発臓器を問わず、癌が胸膜または腹膜に浸潤している可能性を示唆する。 胃癌・腸癌・膵癌などCA125非産生性の癌(肺癌は産生例あり)においてCA125が上昇している場合、胸膜・腹膜・心嚢などの漿膜にがん細胞が浸潤・播種している可能性を考える必要がある

良性疾患におけるCA125高値の意義

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良性婦人科疾患[3]

良性卵巣腫瘍、子宮内膜症の半分以上で陽性になる。 子宮内膜症においては、モニタリングマーカーとしても使用される。 また、卵巣過剰刺激症候群で上昇する。

胸膜・腹膜の刺激[3]

胸膜や腹膜への各種の侵襲により非特異的に上昇する。

  • 胸膜や腹膜に及ぶ手術(試験開腹、腹腔鏡、なども含む)
  • 胸膜や腹膜の炎症
  • 肝硬変、心不全などの浮腫性疾患による胸水や腹水の貯留

CA125低値の意義

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通常、CA125低値は臨床的に問題にならないが、腹膜透析患者においては、腹膜劣化のマーカー(低値は腹膜機能の低下を示唆)として使用されることがある[7]

脚注

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注釈

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  1. ^ CA125以外の卵巣癌マーカー、CA130(試薬販売中止)、および、CA602も、CA125と同じムチン様糖蛋白分子のコア蛋白上のエピトープを認識しており、意義はCA125と同様である。同時に測る意味はない。
  2. ^ 閉経前女性であるにもかかわらずCA125が測定感度以下の場合は、抗CA125自己抗体の存在による偽低値が疑われる。
  3. ^ CA125値は、ABO血液型に影響され、O型で低値である。

出典

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  1. ^ CA125 ひょうご病理ネットワーク
  2. ^ a b 櫻林郁之介 編『今日の臨床検査2021-2022』南江堂、2021年5月15日。ISBN 978-4-524-22803-4 
  3. ^ a b c d e 高久史麿 編『臨床検査データブック2021-2022』医学書院、2021年1月15日。ISBN 978-4-260-04287-1 
  4. ^ 木村英三「卵巣がんスクリーニングにおける腫瘍マーカーの有用性と問題点(婦人科がんスクリーニングの有用性と問題点)」『日本産科婦人科學會雜誌』第55巻第8号、日本産科婦人科学会、2003年、983-995頁、CRID 1541135670291608576 
  5. ^ 大西宏明, Medical Practice編集委員会 編『臨床検査ガイド 2020年改訂版』文光堂、2020年6月17日。ISBN 978-4-8306-8037-3 
  6. ^ 大倉久直「4.腫瘍マーカーは早期診断にどこまで有用か」『日本内科学会雑誌』第94巻第12号、2005年、2479-2485頁、doi:10.2169/naika.94.2479 
  7. ^ 田村雅仁, 宮本哲, 鐘江香, 芹野良太, 椛島成利, 尾辻豊「2. 腹膜劣化の予防」『日本透析医学会雑誌』第46巻第2号、2013年、155-157頁、doi:10.4009/jsdt.46.155 

関連項目

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