《ホウボウ》という魚が海の中に棲んでいる。 海底を歩くようにして泳いでいる(らしい)。
その証拠に、ヒゲのようなものが他の魚より伸びて、
それで歩く姿が、映像に写されている。
ホウボウの特徴は、何と言っても、腹ビレの美しさ。
ひろげるとウチワのように大きくなり、
緑やら青やら、にぎやかな色合いの芸術品となる。
それは、山の中に生える樹木の葉っぱのようでもある。
さらに裏側となると、色合いが赤にも及び、
いったい何の為にこれほどの極彩色のヒレを、
身に付ける進化をしたのだろうか?
ホウボウは釣れ上がると、「ボウボウ」と鳴くから、
そう名前が付いた。
あるいは、「方々」歩き回るので、名前を頂いたと、
言われている。
私的には、ヒレの「方側方側」(おもて側うら側)の、
色違いとも考えた。
ホウボウによく似た魚に、これがいる。
《カナガシラ》
ホウボウを一回り小さくした魚で、腹ビレを広げると赤い。
釣り人は、船の上でコレが釣れ上がると、
「なんだ、カナガシラかヨ」
と口を曲げて残念がる。
大きさが小さい不満を漏らしているのだが、
ホウボウもカナガシラも食べれば同じく旨い。
そして、ここが肝心なのだが、
ホウボウの浮袋の旨さは、ほかに類をみない。
お湯でゆでるだけで、弾力のある柔らかい楕円形になる。
これは、ホテルなどの朝食に出されている、
卵焼きの形に似ている。
釣り人でさえ、この旨さを知らずに、家で捌く時に、
捨ててしまっているヒトが多い。
旨さを知っている人は、ホウボウの浮袋だけ食べて、
身は捨てるという人すらいる。(ナことはありません)
では、カナガシラの浮袋は旨いのか?
実は、私はホウボウはよく釣るのだが、
カナガシラをまだ釣っていないので、知らないのだ。
たぶん、彼ら2種は遠い昔にたもとを分かった種だと思う。
分かつ時も、浮袋の意義を伝えあったと思う。
お互いを見分ける為に、腹ビレの色を変えたらしいが、
浮袋だけは、きちんと伝えてくれたと願いたい。
「ボウボウ」と鳴く息を噴き出す為の、弾力の強い浮袋を、
しっかり親戚の子孫にも伝えたと信じたい。 しまった 浮袋の写真を撮るのを忘れて食べちゃった。