水族館は楽しい。
入口を入ってから、矢印どおりに、進んでゆく。
その途中に、ハタと立ち止まるガラスケースがある。
回遊魚のたくさん泳いでいる水槽だ。
カンパチだの、ブリだの、カツオだの、鯵だの、サバだの・・
青いと言われる魚たちが、これ見よがしに私にその姿態をみせつける。
「どうだ、旨そうだろぅ」
と、自慢しているハズはないのだが、
これでもか、これでもかと泳ぎ来るようすに、
魚好きは、しばし固まった人となる。
何もかも忘れて、その場に立ち尽くす。
24時間居てもいいと許可が出れば、
居るかもしれない。
平面ガラスというモノが発明されて、水槽が出来た。
大昔の人たちは、魚を飼うと云えば、
庭の池に、鯉だの金魚を入れて、それを
上から眺めた。
したがって、
横から眺めた事はない。
横向きの魚を見た時は、すでに死んでいる。
川や海に長い間潜らなければ、
活きた魚を横から見ることができなかったのである。
水族館に行った方ならお気づきだろうが、
回遊魚には、色が不足している。
どういうことか?
例えば、サバが目の前に泳いできたとしよう。
ところが、あの独特の背中の紋様がよく分からないのである。
カツオの場合もそうだ。
ブリの黄色い線もわかりにくい。
みんな銀色をしている。
何故なのだろうか?
実は、生きている魚のウロコは、
地球に対して引力の方向に立つように並んでいる。
うろこが細かすぎて理解しにくいのだが、
横から見る人には、
ウロコという鏡が並んでいるのである。
そうすると、魚の身体に海の中が写る。
つまり、透けて見えるような錯覚すらおこる。
見つかりにくいので捕食されない。
進化がそうさせたらしい。
だから、水族館の横からの眺めは、魚群を見分けにくくしている。
しているのだが、青物に違いなく、
ブックラとした腹をみせつけにやってくる君たちを、
目と首で追いかける。
「おお~君は一周するのが早いなあ~」
いち個体すら分かるようになる。
はっきり分かる彼には、名前すら付けてしまう事もある。
私としては、こんな水族館が嬉しい。
《アオモノ水族館》
横からと上から眺められるようになっており、
プレートには、食べ方も書かれてある。
たぶん・・はやらないだろうな・・