青学大の箱根優勝立役者はGMOへ 東洋大の世代トップランナーはスバル…大学駅伝進路特集
10月になり、多くの企業で25年春に入社する学生の就職内定式が行われた。各校の4年生ランナーの進路も決まりつつある。今年1月の箱根駅伝3区で日本人歴代最高記録で区間賞を獲得し、青学大の優勝に貢献した太田蒼生(あおい、22)は卒業後の進路先としてGMOインターネットグループ(GMO)に絞った。昨季学生3大駅伝は欠場したが今季、復活した東洋大の石田洸介(22)はスバルを志望。各チームの命運を握る最上級生は、学生ラストシーズンを全力で駆け抜けた後、次の舞台に挑む。
第100回記念の箱根駅伝で太田は歴史に残る快走を見せた。下り基調(標高差約45メートル)とはいえ、21・4キロの3区をハーフマラソン(21・0975キロ)の日本記録(1時間)より速いタイム(59分47秒)で走破。青学大の2年ぶり7度目の優勝の原動力となった。
卒業後、プロランナーとなることも検討していたが、原晋監督(57)らと相談を重ねた結果、原監督がEKIDENダイレクターを務めるGMOへ加入する意思を固めた。GMOは太田の意思を尊重した活動プランなどを調整しているという。マラソンで世界を目指すと同時にニューイヤー駅伝でも「駅伝男」の雄姿が見られそうだ。他の青学大勢では野村昭夢(21)、白石光星(22)は住友電工へ加入する見込み。
中学、高校時代から世代トップランナーとして注目されてきた東洋大の石田は、実業団選手としての進路先をスバルに絞った。福岡・浅川中で3種目で中学日本記録を樹立。群馬・東農大二高では5000メートルで16年ぶりに日本高校記録(当時)を更新した。昨季は不調で学生3大駅伝を全て欠場も今季、復活。5月の関東学生対校選手権1万メートルでは28分8秒29の自己ベストで6位に入賞した。複数の実業団からオファーを受けた中、不調時も高い評価を変えなかったスバルと「相思相愛」の関係を築いた。
スバルはパリ五輪3000メートル障害8位入賞の三浦龍司(22)、「口町ロケット」の愛称を持つ口町亮(30)、1万メートル26分55秒09の自己記録を持つキプランガット・ベンソン(21)=ケニア=ら好選手が多い。近年、学生ランナーに人気上昇中。群馬・太田市に本拠地を置き近い将来、地元で悲願のニューイヤー駅伝初優勝が期待されている。
東洋大では他に今年の箱根2区6位の梅崎蓮主将(22)が大塚製薬、同3区6位の小林亮太(22)はトヨタ自動車、同9区2位の吉田周(21)が中電工、5000メートル14分6秒06の自己記録を持つ増田涼太(22)は東京東信用金庫に進む予定だ。
前回の箱根でチーム史上最高の3位に入った城西大では、9区10位の平林樹(21)が富士通、7区5位の林晃耀(21)が小森コーポレーション、6区13位の久保出雄太(21)が中国電力への入社を希望。今年の日本選手権1500メートルで自己ベストの3分39秒96で6位入賞した栗原直央(21)は、神野大地(31)が選手兼任監督を務めるM&Aベストパートナーズ入りが予定されている。
昨季の出雲と全日本で3位、箱根5位と安定した成績を残した国学院大では、ハーフマラソン日本人学生歴代4位(1時間0分43秒)の山本歩夢(22)が名門の旭化成、ハーフマラソン1時間2分15秒の自己記録を持つ鶴元太(22)が埼玉医科大グループを志望。2月の大阪マラソンで日本学生最高記録の2時間6分18秒で優勝した平林清澄(21)は、来年の東京世界陸上、28年ロサンゼルス五輪で日本代表を目指す環境を整えるべく前田康弘監督(46)らと入念に話し合いを重ねている。
前回の箱根10位で9年ぶりにシード権を獲得した大東大では、7区6位の小田恭平(21)がNTT西日本、9区9位の大谷章紘(22)がYKK、4区18位の西代雄豪(21)がNTNを志望。前回の箱根11位でシード権を逃した東海大で6区9位の梶谷優斗主将(21)は住友電工、4区16位の野島健太(22)がロジスティード、五十嵐喬信(22)は九電工に進む予定だ。
箱根駅伝は1920年に「世界で通用する選手を育成する」という理念を掲げて創設され、それから1世紀が過ぎた。箱根路での戦いを終えた後も、理念を実現するためのそれぞれの戦いは続く。(竹内 達朗)
〇…卒業を機に競技の第一線から退く決断をした選手もいる。箱根5区で1年時に3位、3年時に2位(区間新記録)で青学大の2度の優勝に貢献した若林宏樹(22)は大手の生命保険会社に就職予定。1万メートル28分25秒71と学生トップレベルの力を持つが新たな世界で勝負する。競技人生ラストランは箱根5区となることが濃厚だ。青学大主将の田中悠登(22)はアナウンサーを志望し、地元テレビ局の福井放送から内定を得た。タスキをマイクに持ち替えた活躍が期待される。