【箱根への道】箱根駅伝13位から雪辱へ中大がこだわった「距離」 青学大・原監督も「今季の中大は強い」
来年の第101回箱根駅伝で29年ぶり歴代最多15度目の優勝を狙う中大が、充実の夏を過ごしている。優勝候補に挙げられた前回の箱根は体調不良者が続出し、まさかの13位。3大会ぶりにシード権も逃した。就任9年目の藤原正和監督(43)の下、チーム一丸でタフさを追い求めて再出発し、5月の関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)では中長距離5種目で入賞者を出した。例年以上に長い距離を積むことを重視し、主力の溜池一太(3年)、大型ルーキーの岡田開成らも順調に夏合宿を消化。秋の駅伝シーズンでの名門復活へ、着々と底上げが進んでいる。
中大の夏合宿は、酷暑をものともしない活気がみなぎった。9月の西湖合宿では1周約10キロの湖を根気強く駆けた。1月の箱根は本来の力を出し切れず13位。これを糧に主将の佐野拓実(4年)は「駅伝は何が起こるか分からない。僕が言葉にしなくても、全員が心で感じた」とチーム一丸で今季の再出発を切った。春のトラックシーズンは“中大祭り”と呼ばれるほどの躍進ぶりだった。関東の学生長距離ランナーにとって、箱根と並ぶビッグイベントの関東インカレは新入生の岡田が5000メートル6位、溜池が1万メートル4位を始め、入賞者続出で藤原監督も「思っていたような強化ができた」と手応えを隠さない。
距離にこだわった。昨季まで各選手に「時間」で伝えていたジョギングを「キロ数」で指定するように変更し、箱根後から全員が距離を積んできた。2~3月に米国合宿で鍛錬した溜池は「そこ(現地)の選手は1回のジョグで16キロは走っていた。マネしてその量で継続した」と貴重な経験を持ち帰り、7月は1万メートルで中大勢初の27分台となる27分52秒38をマーク。チーム全体としても「8月(の走行距離)は例年より70~80キロ、平均で上げていますが皆、クリアしていました」と藤原監督。岡田の月平均は、高校時代より約200キロも増えたという。
秋の厳しい日程を見据えてきた。10月19日の箱根予選会から2週間後の11月3日には、全日本大学駅伝に出場する。佐野主将は「予選会は確実に1位通過して、全日本でも上位で戦うことが目標。(好成績を)2本そろえる意識は1月から皆持っている」と言い切る。今季前半から連戦を強く意識し、柴田大地(2年)は6月の日本選手権(新潟)で3000メートル障害2位と大健闘など、1か月で4レースを走破。多くの選手が連戦で心身共にタフさを身につけ、駅伝シーズンの予行演習を済ませてきた。
起伏の激しいコースで「夏の仮想・箱根駅伝」と呼ばれる6月の男鹿駅伝(秋田)で、前回箱根優勝の青学大を抑えて優勝。指揮官は「自信を植えつけてやりたかったですし、狙って勝てたのは非常に良かった」とうなずき、青学大の原晋監督(57)も「今季の中大は強い」と警戒を強めた。
昨季5000メートルで日本人学生歴代7位の13分22秒01をマークしたエース・吉居駿恭(しゅんすけ、3年)も順調に進化中。夏は実業団合宿で練習を積み、指揮官は「(夏の)後半にかけてグッと良くなってきた。駿恭は予選会には使わずに全日本一本で、と話しています」と起用法を明かした。タフさと自信を取り戻した名門が、一致団結して雪辱の駅伝シーズンに臨む。(手島 莉子)
◆中大 1920年創部。箱根駅伝は20、24、2017年の3回を除いて出場。総合優勝14回、6連覇(59~64年)、出場97回、連続出場87回はいずれも大会最多。出雲駅伝と全日本大学駅伝の最高はともに2位。タスキの色は赤。主な陸上部OBは創価大・榎木和貴監督、亜大・佐藤信之監督ら。