「今年一番いいかも」サニブラウン、予選で五輪日本人最速10秒02で準決勝進出 「暁の超特急」以来92年ぶり決勝射程
◆パリ五輪 第9日 ▽陸上(3日、フランス競技場)
男子100メートル予選は3日、フランス競技場で行われ、世界選手権2大会連続ファイナリストで日本のエース、サニブラウン・ハキーム(25)=東レ=が五輪日本人最速記録の10秒02(無風)をマークし、4組2着で準決勝進出を決めた。「暁の超特急」と呼ばれた吉岡隆徳以来92年ぶりの五輪決勝へ、絶好のスタートを切った。坂井隆一郎(26)=大阪ガス=は10秒17(追い風0・3メートル)、東田旺洋(28)=関彰商事=は10秒19(追い風0・6メートル)で敗退した。
難なく、第1ステップをクリアだ。余裕の表情で準決勝へ駒を進めたサニブラウンは「悪くないッすね。(調子は)今年一番いいかも」。スタートから前に出ると終盤まで先頭を保ち、最後は余力を持って2番手でフィニッシュ。16年リオ五輪で山縣亮太が出した10秒05を超える五輪日本人最速記録にも「大丈夫です、もう気にしなくて。もうどんどん上がるんで」。世界のファイナルを2度経験した男は、貫禄が違った。
今季、課題だったスタートが改善された。拠点の米国で練習していた昨年11月、「感覚的にしっくりくる日があった」。号砲直後の足運びがスムーズになり「早い段階で加速に乗れるようになった。全く違う前半」。この日もスタートの流れるような加速から「40メートルまではしっかり出てあとはスムーズに流していく」という戦略を遂行。アナウンスの「ジャパン! ジャパン!」が響き渡るほど、会場も納得の強さだった。
五輪は苦い思い出だった。21年東京五輪は100メートルで出場を逃し、200メートルのみに出場。3か所同時にヘルニアが発症し「歩くこともできず、寝たきり。寝転がっても苦痛」と苦しみ、予選敗退。日本歴代2位の自己記録20秒08から1秒33も遅れる波乱だった。だからこそ五輪は「これ(パリ)が1回目ですかね」と笑う。
21年東京五輪の決勝進出ラインは10秒00。メダルラインは9秒89。五輪イヤーの記録水準は上がっているが「明日も大事になってくる40~70メートルまで組み立てていければしっかり戦える」とイメージは十分膨らんでいる。準決勝、決勝は5日(日本時間)。「自分自身の走りをしっかりして、決勝につなげるつもりで。勝負できると思います」。まずは舞台に立つチケットを、手に入れる。(手島 莉子)
◆サニブラウンの東京五輪VTR 100メートルは日本選手権6位で出場を逃し、200メートルに参戦。予選で21秒41(追い風0・9メートル)の2組6着で敗退した。日本歴代2位の自己記録20秒08から、1秒33も遅れたことに「何であんなに遅かったのか分からない」と表情を曇らせていた。
◆サニブラウン・ハキーム 1999年3月6日、東京都生まれ。25歳。小学3年から陸上を始める。2017年の日本選手権の100&200メートルを制し、世界選手権で200メートル決勝に大会史上最年少で出場。米フロリダ大に進学後の19年6月の陸上全米大学選手権で9秒97の日本新(当時)を樹立。21年東京五輪は200メートル予選敗退。22年世界陸上で日本勢90年ぶりの世界大会決勝に進み7位。23年世界陸上6位。190センチ、83キロ。家族はガーナ人の父と日本人の母、弟。