“元祖・駅伝男”の祖父からタスキ、青学大ルーキー・佐藤愛斗が目指す「エース、旭化成、五輪」
今年度も3か月近くがたち、各校では勢いある新人ランナーがチームを活気づけている。箱根駅伝連覇を目指す青学大には5000メートルで日本高校歴代2位(13分28秒78)の折田壮太(兵庫・須磨学園)ら有力選手が多数入学。その中で、佐藤愛斗(宮崎・小林)は入学後、5000メートルの自己ベスト記録を2度更新し、頭角を現している。祖父の市雄さん(72)は旭化成時代に全日本実業団駅伝で史上最多の10回の区間賞を獲得。尊敬する祖父のような勝負強いランナーを目指す。
第100回箱根駅伝優勝メンバーの先輩や「史上最強ルーキーズ」と呼ばれる同期生ら好選手がそろう今季の青学大の中で、佐藤は存在感を増している。「高校の時に比べて練習量が格段に増えて、きついですけど、毎日が充実しています」と新しく始まった大学生活を楽しそうに話す。
4月早々に高校時代の自己ベスト(13分57秒15)を約2秒更新する13分54秒93で走破。6月には13分49秒82とさらに縮めた。28日にはU20日本選手権(新潟)5000メートルに出場する。
佐藤の祖父・市雄さんは旭化成の黄金期を支えた伝説のランナーだ。日本選手権優勝、全日本実業団最多10回の区間賞などを誇る。「中学まではサッカーをやっていましたが、じいちゃんが強いランナーだったと聞いていたので、陸上にも興味があり、高校から本格的に始めました。陸上を本気でやってみて、じいちゃんのすごさを改めて知りました。尊敬しています」と語る。宮崎の強豪・小林で力を蓄え、全国クラスの選手に成長した。
孫の活躍を市雄さんは常に楽しみにしている。市雄さんの生涯ベスト記録は5000メートルが13分59秒2、1万メートルが28分43秒8。「5000メートルは愛斗が高校の時に超えてくれた。1万メートルも早ければ今年の秋に超えてくれるでしょう」とうれしそうに話す。新天地で奮闘する愛斗に「故障をしないように頑張ってほしい」と多くの祖父と同じように優しくエールを送る。同時に「故障を恐れて、練習で力を抜いてはダメだ」と元トップランナーらしい厳しさもにじませた。
原晋監督(57)は「佐藤市雄さんと言えば『元祖・駅伝男』です。愛斗も市雄さんのような選手になってほしい」と期待する。「今季は土台をつくることが一番ですが、その中で、箱根を目指します。2年目からは常に結果を残し、4年目には青学大のエース格になりたい」と佐藤は力強い。さらには大学駅伝の先も見据える。「将来は旭化成で走って、五輪を目指したい」。夢と希望にあふれるルーキーの挑戦が始まっている。(竹内 達朗)
◆佐藤 愛斗(さとう・あいと)2005年10月31日、宮崎市生まれ。18歳。中学まではサッカー部。小林から本格的に陸上を始める。2、3年時に全国高校総体5000メートルに出場(いずれも予選敗退)。全国高校駅伝では2、3年時にともに3区21位。全国都道府県男子駅伝は2年1区31位、3年4区8位。今年4月に青学大コミュニティ人間科学部に入学。175センチ、55キロ。
◆佐藤市雄氏 名門の旭化成に所属し、トラックでも駅伝も抜群の勝負強さを誇った。1971年の日本選手権5000メートル優勝。73年の日本選手権では5000メートルと1万メートルの2冠を果たした。全日本実業団駅伝では、19歳から33歳にかけ、現在も破られていない10度の区間賞。優勝にも6回貢献した。
〇…青学大には5000メートル日本高校歴代2位の折田、同4位の飯田翔大ら高校時代に13分台をマークした選手が6人入学。20日現在で9人が13分台に突入している。他にも、エース黒田朝日(3年)の弟で3000メートル障害日本高校歴代4位(当時)の8分40秒71の記録を持つ然、若林宏樹(4年)の弟の良樹、駿河台大の徳本一善監督(44)の長男・陽ら好選手も多い。「黄金世代となるでしょう」と原監督は期待を込めた。
◆東洋大 1万メートル8人の合計タイムで7枠を争う全日本大学駅伝関東選考会(23日)の登録メンバー(13人)に松井海斗、宮崎優、内堀勇、迎暖人と4人のルーキーが名を連ねた。酒井俊幸監督(48)は「今季の1年生は元気がいい。全日本選考会というプレッシャーがかかるレースでも積極的に起用したい」と戦略の一部を明かす。昨季の学生3大駅伝は出雲8位、全日本14位、箱根4位。今季の飛躍を期す指揮官は「ここで1年生が結果を残せば選手層が厚くなり、秋以降の駅伝につながります」と力を込めた。
◆順大 3000メートル障害で日本高校記録(8分32秒12)を持つ永原颯磨、全国都道府県対抗男子駅伝1区で区間新の川原琉人ら逸材が入学。関東学生対校1部1万メートルで28分13秒67の大幅な自己ベストで8位に入賞した玉目陸は「ハーフマラソンに耐えられる体をつくりたい」と意欲的。全日本大学駅伝関東選考会には川原、玉目ら4人が登録。前回箱根17位から巻き返しを図るチームにとって頼もしい限りだ。