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ほぼ日の学校新講座「橋本治をリシャッフルする」 - ほぼ日刊イトイ新聞

講師紹介
中条省平さん

学校長の推薦コメント

映画評論でも知られる仏文学者の中条さんは、
2009年から手塚治虫文化賞選考委員を務める
マンガ評論家でもあります。

そんな中条さんですが、橋本治さんの名著
『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』との
出会いがなければ、
「自分は一生少女マンガと無縁だったかもしれない」
と語ります。それほど、このマンガ評論の傑作は
中条さんにとって決定的なものでした。

最初、この本が北宋社から出されたとき、
口絵の橋本治さんのタキシード姿の写真
(おおくぼひさこさんの作品です)を見て、
「けっ、本気かよ!」
「こいつ、人を食ってる」と
いささかの反発を覚えたそうです。

しかし、読み込んでいくうち、
その評論の構えの大きさ、幅の広さに驚き、
かつ圧倒されたといいます。

加えて、論じる対象にあわせて次々と変化する
橋本さんの文体にも目を見張ります。

かくして、「橋本治の思考と文体の魔術によって
少女マンガの沃野に引きずりこまれた」と
中条さんは告白します。

同時代の空気を知るひとりとして、
また文学者としての視野の広さ、
柔軟さを持ち合わせた評者として、
『キンピラゴボウ』が放った画期的な意味合いを
中条さんにはたっぷり
語っていただきたいと願います。

講師のことば

橋本治さんの書いたものを読んでいて感じるのは、
「共感できる人がいるな」
「この人の言っていることは信用できるな」ということです。

なにか教えを下すメンター的な存在というよりは、
そのひとの言っていることにいつも耳を傾けて
自分のちょっとした導きにしたい、
おもしろい兄貴という感じ。

これから生きていくにあたって、
自分の知らない世界を教えてくれる
そういう感覚です。

ひと時代前の思想家とはちょっと違って
「世界の解釈はこうである」とか
「人間の生き方はこうである」というようなこと示すというより
全ての事象に触れても
それなりの筋の通った、
おもしろい刺激的なヒントをくれる人という印象があります。

考えるヒントかな。

橋本治さんの『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』がなければ、
少女漫画をこれほど本気で読むことは決してなかったので
この存在はとても大きいです。

わたしの知らなかった少女漫画という世界を教えてくれ
この上ない道しるべでした。

「いいものがあるよ」って趣味的に教えてくれるだけではなく
これが考えるヒントにもなりうるという
とても大きな存在です。

やっぱり考えることを活性化させてくれるところが
あのひとの面白いところでしょうね。

そのうえで
自由にやってもいいけど、自分で考えてね。という。

授業では、まず
橋本治という存在が出てきた歴史的なリアリティと
橋本治という存在自体の歴史的意義をお話ししたいです。

そしてもちろん、
『キンピラゴボウ』にでてくる少女漫画について。

どの作品も本当におもしろいので
そのおもしろさ、深さを橋本治に沿いながら話します。

そして、そのなかに隠れている橋本治個人のこだわりや
近代日本に対する考え方も見えてくるはずです。

「橋本治と少女漫画」というものを考えるとき
そういういくつもの層があるので、
それをひとつひとつみなさんと紐解きながら
見やすい形にしていけたらと思っています。

中条省平ちゅうじょうしょうへい

フランス文学者。学習院大学フランス語圏文化学科教授。フランス文学の飜訳のほか、映画評論、マンガ評論など幅広く活躍。著書に、『マンガの教養 読んでおきたい常識・必修の名作100』、『恋愛書簡術 古今東西の文豪に学ぶテクニック講座』、『マンガの論点 21世紀日本の深層を読む』、『世界一簡単なフランス語の本 すぐに読める、読めれば話せる、話せば解る!』などがある。