認知症は「脳の糖尿病」だった! 20年後に後悔しないための処方箋
- 2023.11.02
- ためし読み
認知症は食生活で防げる
◎アルツハイマー病は脳の糖尿病
なぜ糖尿病の専門医が認知症についての本を書くのか、不思議に思われている方もいることでしょう。
その理由は、ひとことで言えば、アルツハイマー病は脳の糖尿病で、糖尿病がアルツハイマー病を引き起こす最大の原因だからです。
私の専門は糖尿病ですが、正確には生化学という学問を長年学んできた医学研究者です。中でも、老化を進め、認知症の原因でもあるAGEと呼ばれる物質のことを四五年間にわたって研究してきました。極めて多くの方に認知症の検査を行って、「予防」という治療法を行ってきました。
AGEとは、「Advanced Glycation End-products」の略語です。日本語では、「終末糖化産物」と訳されています。
実は私はアメリカのロックフェラー大学医生化学講座でAGEの研究をしているときに、血液中や尿中のごく微量なAGEを測定する方法を世界で初めて見つけて、一九九二年、科学雑誌『SCIENCE』に発表しました。この発表は世界的な反響を呼び、AGEの研究が進む一つのきっかけになったのです。
そして、AGEは認知症だけでなく、私たちが老化する最大の原因だということが次第に明らかにされてきたのです。AGEこそは老化を招く人類最大の敵なのですね。
あなたは認知症になるのは、歳をとってからだと思っていませんか? つまり、認知症は年寄りの病気で、今あなたが四〇歳や五〇歳だったら、自分には全く関係のない病気だと考えているでしょう。
それはとんでもない間違いで、そういう考えの人が認知症をおびき寄せてしまうのです。
◎認知症という病気は、二〇年かけて出てくる
まずあなたが知るべきことは、認知症という病気は、二〇年かけて出てくる病気だということなのです。ですから、三〇歳を超えたら、この病気にならないような食事を心がけて、二〇年先に認知症にならないようにする行動を始めなければダメなのです。
もうひとつ大書しておきたいのは、例えば六〇歳を過ぎて、認知症になってから治療することは不可能だということなのです。
この病気はなってしまうと絶対に治らない点が特徴なのです。認知症にならないためには予防しか治療方法はありません。つまり、普通の病気のようになってから治療して治すのではなく、ならないように予防することが唯一の治療なのです。
その予防治療についてはすでに自著の『アルツハイマー病にならない習慣』(フォレスト出版)という本で詳しく書きました。
詳細は第8章で述べますが、簡単に言っておきますと、脳のMRI画像を使って海馬の萎縮を正確に調べるVSRADという検査を定期的に行う。そしてわずかでも海馬の萎縮が進行してきたら、イチョウ葉エキスという健康食品の摂取を開始する。その量や製品の種類も重要です。
◎認知症は不適切な食事が原因で起こる
このように検査して、脳の変化を早期に見つけて予防治療するのも大事ですが、最も大切なのは適切な食事をして脳の萎縮を進めないことです。
なぜなら、認知症は不適切な食事が原因で起こる病気だからです。
ですから、この病気の予防にとっては、食べることが非常に重要になってきます。
フランスの美食批評家・ブリア=サヴァランは、「あなたが普段食べているものを言ってみたまえ。あなたがどんな人か言ってみせよう」と言いました。
それに倣って私が格言風に言うならば(ちょっとエラそうになりますが)、「あなたが普段食べているものを言ってください。あなたがどんな病気にかかりそうか言ってみせます」となるでしょう。
認知症は糖尿病という病気に非常に似ています。糖尿病も一度なったら絶対に治らない病気です。どんなに食事に気をつけて運動して薬を飲んでも、絶対に治りません。
実は、認知症と同じで、糖尿病も二〇年前からその兆候は始まっているのです。つまり、糖尿病を避ける食事をしなかったツケは、なんと二〇年後に糖尿病として出てくるのです。
今アンケートをとると、認知症になりたくないという人ががんになりたくない人の数をしのいでいます。何故かと言うと、認知症は治らない病気であることを皆さんがご存じだからだと思います。つまり、人々が最も恐れる病気はがんではなく認知症なのです。
この本を通して、「認知症にならない食事」とはどういうものかを知って欲しいと思います。
きっとあなたが驚くのは、認知症を予防するために気をつけなければならないのは、あなたたちが毎日食べているご飯やパンやラーメンやパスタやお菓子やケーキだという事実です!
いちばん好きなものが認知症の原因だなんて、びっくり仰天じゃないですか。
これから、それはどうしてなのかということを、わかりやすく簡単に説明していきます。
もちろん、皆さんが知りたいのは医学的な理由や理屈ではなく、どうしたらいいかという具体的な方法ですよね。この本では、そのやり方を医学的な立場から詳しく説明します。
同じ事柄が繰り返し出てきますが、「何だまたそれか」と思われるのではなくて、それだけ大事なことですので、その都度、頭に入れていただければ幸いです。
この本を読んで、将来、絶対に認知症になることのない脳を作ってください。
「はじめに 認知症は食生活で防げる」より