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【島News】3島合わせて380人。三島村ではじまる芋焼酎の島おこし。黒島に村営焼酎蔵を開設へ|ritokei(離島経済新聞)

つくろう、島の未来

2024年12月02日 月曜日

つくろう、島の未来

鹿児島県三島村(みしまむら)が毎年限定販売する2,000 本 の芋焼酎「みしま村」が即日完売する人気商品となっている。人口380人の三島村は、新たに村直営の焼酎蔵を開設し、焼酎を現地生産することで雇用創出や観光に役立てる計画を立て、本格焼酎の産地としても珍しい村営の島焼酎蔵が誕生しようとしている。(画像提供:三島村役場)

豊かな森が育むおいしい水に恵まれた黒島で焼酎がつくられる

文化財や自然が残る一方、進む高齢化

鹿児島県三島村(みしまむら)は、鹿児島港から南へ約100キロメートルの海上にある竹島、硫黄島、黒島と2つの無人島からなり、3島に380人(※)が暮らしている。

※2016年12月時点

南西諸島の最北部に位置し、四方を広大な外洋に囲まれた三島村には、縄文後期の遺跡などの文化財や手つかずの自然が残され、全陸域と周辺海域が「三島村・鬼界カルデラジオパーク」に指定されている。

左:東温泉(硫黄島)/右:海岸風景(竹島)

近年の三島村の人口推移は、2010年から2013年の4年平均で自然減(※)2.7人、社会減(※)7人となっており、年に約10 人のペースで減少している。また、全住民に65歳以上が占める割合を示す高齢化率は30.4%と、高齢化が進んでいる。(※)

※自然減……住居の移動による人口の増減を除いた人口減少
※社会減……他地域への転出によって生じる人口減少
※参考資料:三島村まち・ひと・しごと創生人口ビジョン

高齢化による、農家や建設業など主要産業の就業者数減少も地域の課題となっている。現在も休耕地が多く見られる三島村では、耕作放棄地の増加も危惧されていた。

三島村では、定住促進対策として2013年から子牛1頭や支度金の支給、移住後3年間の生活助成金の支給などの支援策を実施して話題となり、一定の成果を挙げてきたが、村内では就業機会が限られるため、移住者の定住に向けた安定的な雇用の確保が求められていた。

芋焼酎「みしま村」が人気に

黒島で多く栽培されてきたサツマイモ「紅乙女」は、甘みと旨みが強い特長がある。ほとんどは自家消費されてきたが、この芋が焼酎の原料に適していたことから、三島村では2005年から鹿児島市内の酒造メーカー濱田酒造株式会社に「紅乙女」を原料とした焼酎製造を委託し、村の特産品として芋焼酎「みしま村」を製造、販売。

三島村産のサツマイモで造る芋焼酎「みしま村」は小売価格が5合瓶(900ミリリットル)で1,800 円と、大手酒造メーカーの造る量産品に比べると割高なものの、強い香りと、まろやかでほのかに甘い味わいが評判となり、毎年限定販売される2,000 本が即日完売するほどの人気商品に育った。サツマイモの増産にも取り組み、2トンほどだった生産量を2016年までに3.5 トンまでに拡大させた。

サツマイモの収穫風景

「みしま村」が評判となるものの、村内産のサツマイモは生産量が限られるため、焼酎が製造できるのは年間約2〜3キロリットルにとどまる。酒税法で定められた単式蒸留焼酎の製造免許取得に必要な製造数量年間10キロリットル以上という基準には届かなかった。

そこで、三島村は2005年夏に国家戦略特区に提案書を提出し、同年秋に行われた国家戦略特区ワーキンググループの場で大山辰夫村長が自らプレゼンテーション。その後も、国に対し要望と協議を重ねてきた。

こうした地道な働きかけが実を結び、地元の農産物を使うことで製造数量が基準未満でも焼酎を製造できる「焼酎特区」を可能にする法整備が進もうとしていた。この流れに乗り、三島村では芋焼酎の現地生産に乗り出した。黒島の村有地に村営の焼酎蔵を開き、村内産のサツマイモと黒島の水を原料に焼酎を製造し、三島村を代表する特産品としてブランド化を図る。

専門家の協力も得ながら、これまで商品化が進んでいなかった三島村特産のタケノコなど地元の食材を活用した焼酎に合う酒肴の商品化にも取り組み、焼酎蔵ツアーなどで観光活性化にも役立てる計画だ。サツマイモの需要増により、新規就農者の増加など農業の活性化も期待されている。

地域おこし協力隊が杜氏に

5_焼酎

三島村特産の大名タケノコをつかった酒肴も開発中

当初は三島村が酒造免許を取得し、公設公営で焼酎蔵を運営。焼酎の製造指揮を担う杜氏1名、パート職員9名を雇用する予定。事業開始後5年間は村営で事業を行う計画だが、将来的には経営状況を見極めながら民営化についても検討を進める。

新設される焼酎工場は年間最大10キロリットルが製造可能。今年10月に着工し、2018年3月に完成予定で、サツマイモの収穫時期に合わせて2018年9月から操業を開始する計画だ。総工費は約2億1,000万円で、うち6,000万円は国の地方創生拠点整備交付金が充てられる。

杜氏に就任するのは、鹿児島県本土から黒島に移住し、三島村の地域おこし協力隊として活動する25歳の若者。9月から3カ月間焼酎製造を学び、2018年秋に初年度の焼酎製造に挑む。パート職員は地元在住の高齢者などの雇用を想定している。

製造期間以外はサツマイモ生産にも従事し、焼酎原料に使用する分だけではなく、優良な苗を増やして3島の生産者へ配布する。併せて村が休耕地の活用や農道の整備を行い、サツマイモの生産体制を強化していく。原料芋の増産を図りながら、焼酎5合瓶で初年度に4,000本、次年度に6,000本の生産を目指し、3年目以降に製造免許の上限に合わせた生産体制構築を目標としている。

三島村役場の担当者は、「黒島は水がおいしいですし、地元で生産することで芋の鮮度も良くなるので、おいしい焼酎ができるのではないかと期待しています。3島が一つのものづくりに取り組むことで地域の活性化にもつなげたい。焼酎や酒肴などの食を通じて、三島村の魅力も伝えていければ」と期待を込めた。


【関連サイト】
鹿児島県三島村

     

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