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テクノロジーがペットと飼い主の距離をもっと縮める?…ペットテックの進化 | 動物のリアルを伝えるWebメディア「REANIMAL」

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テクノロジーがペットと飼い主の距離をもっと縮める?…ペットテックの進化

「イヌパシー・カラー」
  • 「イヌパシー・カラー」
  • ペット用のスマートおもちゃ
  • 「イヌパシー」
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犬用のウェアラブルデバイスを開発するベンチャー企業ラングレスが、ペット関連市場に関するセミナーを行った。フードや日用品、獣医療などを含む世界の市場は成長を続け、2028年には42兆円規模に達すると予測されているという。その中でも、テクノロジーを活用した動物と飼い主のための「ペットテック」には可能性がありそうだ。

伸びが見込まれる世界の「ペットテック」市場

ラングレスは、心拍の情報から愛犬の状態を知らせるハーネス型のデバイス「INUPATHY(イヌパシー)」を2019年に発売した。LEDライトの色で、「ハッピー」や「リラックス」、「ドキドキ」など5つの感情をリアルタイムで表示するという。

「イヌパシー」「イヌパシー」

このようなテクノロジーを使った飼い主向けのソリューションを、ペット関連市場の中でも「ペットテック」市場と呼び、見守りカメラなどもここに含まれる。ペットテック全体では、2023年の国内市場規模は50億円程度との予測だが、世界では2025年におよそ2兆5000億円が見込まれているという。

海外市場の様々なハイテクグッズ

アメリカやオーストラリアなどには、位置情報をスマートフォンで確認できるデバイスを取り扱う企業がある。首輪に装着したGPSによって愛犬を追跡できるシステムは、犬が広い敷地で自由に生活する環境ならではのニーズだろう。オンライン上の地図で指定したエリア外に出ると、犬に対して警告を送る「スマートフェンス」というカテゴリーの製品もあるそうだ。

そのほか、動きを感知するセンサーを備えた「スマートクレート」は、犬が中にいる場合に風を送って温度を下げたり、音楽を流してリラックスさせたりする機能が備わっているという。「スマートおもちゃ」は筆者も使っているが、アプリで動きを設定して自立走行させたり、愛犬の活動量をスマートフォンで管理したりする機能が備わっているものがある。

ペット用のスマートおもちゃペット用のスマートおもちゃ

日本はペットとのコミュニケーション中心

日本では大手家電メーカーの参入もあり、ペットカメラが知られた存在だろう。見守りだけでなく、行動の記録やスマートフォンを利用した「通話」も可能な製品がある。室温が設定範囲外になった時や、吠えが一定時間以上続いた場合の通知など、ペットの安全につながる機能の搭載も進んでいる。

そのほか、“愛猫の行動を24時間365日記録する”「Catlog(キャットログ)」や、犬や猫とLINEで会話しているような体験ができる「waneco talk(ワネコ トーク)」といった「ウェアラブルデバイス」も登場している。どちらも首輪に装着した加速度センサーが、ペットの動きをモニターしてAIが解析する。寝ている・走っているなどの活動状態をリアルタイムでチェックしたり、蓄積したデータを後からまとめて確認したりすることが可能だ。

首輪型の新しいデバイス

ラングレスは、これまで心拍センサーだけだったイヌパシーに加速度センサーを追加したデバイスを開発した。年内の発売が予定されている「イヌパシー・カラー」は、これまでのハーネス型から首輪になり長時間の装着でも犬にとっての負担は少なそうだ。

「イヌパシー・カラー」「イヌパシー・カラー」

また、心拍と行動データを合わせて収集することで、より細かく愛犬の状態が解析できるだろう。スマートフォンに表示されるデータから、「“あの時、どうしてストレスを感じていたのか?”など、愛犬の行動とその時の状態を振り返って、一緒に考えることができます」と同社の山入端佳那CEOは説明する。

ストレスレベルや運動量の記録がすぐに分かるため、例えば愛犬の状態に応じて散歩の時間を増減するなどの対処ができる。また、外出先で心拍データを確認し、愛犬がストレスを感じていると判断すれば早めに帰宅して一緒に遊ぶといったことも可能になる。

心拍変動データに基づいた解析

イヌパシーは、「心拍変動解析」で犬の状態を判断している。この手法では、心拍数に加えて鼓動の長さや“ゆらぎ”など、心臓に現れる様々な動きの変化を分析する。これは人間用の健康管理アプリと同じ考え方だろう。スマートウォッチなどは、センサーが心拍変動(Heart Rate Variability: HRV)データを収集する。その情報に基づいてAIが自律神経の働きを解析し、ストレス状態にあるのか、リラックスしているのかなどを推定している。

人間と同じように、犬の場合も心拍のリズムに自律神経の状態が現れるとラングレスは説明する。今年のインターペットでは、同社の山口譲二CTO(最高技術責任者)に話を聞くことができた。山口氏は、そうした心拍の変化を独自のアルゴリズムで図形化し、犬の行動と照らし合わせて解析していると話す。新しい首輪型デバイスは加速度センサーが動きも把握するため、愛犬の状態をより詳しくモニターできることが考えられる。

「イヌパシー」「イヌパシー」

ペットの気持ちが正確に理解できる将来?

ウェアラブルデバイスによってHRVデータを常時監視することができれば、将来的には高度な健康管理が可能になることも期待される。その一方で、日常生活の中で収集した長時間の心拍変動データは、自律神経機能評価には適さないとする報告もある。心拍変動解析による自律神経機能評価法は1980年代から90年代に発展したもので、近年では課題や限界も指摘されているとの主張も見られる。

詳細なアルゴリズムは各社独自のノウハウなため、解析結果の正確性については判断が難しい。だが、ペット用ウェアラブルデバイスは、ラングレスが言うようなペットと「一緒に考える」きっかけの1つとしては有効かもしれない。こうしたデバイスが普及すればデータの蓄積も進み、分析の精度も向上していくことが予想される。

テクノロジーによって、言葉を介さなくても犬や猫の正確な気持ちが理解できる日が来るかもしれない。イヌパシー・カラーには今後、病気や怪我などの緊急時における専門家のアドバイスや、「うちのこにとって、心から楽しい!」(同社資料より)と思うことの発見につながる機能の追加も計画されているという。


2025年にはおよそ2.5兆円と見込まれている世界のペットテック市場。そのうちの約半分がウェアラブル端末だという予測もある。飼い主にとって、ペットの気持ちを正確に知りたいというのは世界共通の願いだろう。ウェアラブルデバイスとAIの進化がそれを可能にすれば、市場規模はさらに拡大するかもしれない。

《石川徹》

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