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煩い(ウルサイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

煩い(読み)ウルサイ

デジタル大辞泉 「煩い」の意味・読み・例文・類語

うるさ・い【煩い/五蠅い】

[形][文]うるさ・し[ク]
物音が大きすぎて耳障りである。やかましい。「隣の話し声が―・い」
注文や主張批評などが多すぎてわずらわしく感じられる。細かくて、口やかましい。「―・い小姑こじゅうと」「規則が―・い」「ワインにはなかなか―・い」
どこまでもつきまとって、邪魔でわずらわしい。また、ものがたくさんありすぎて不愉快なさまにもいう。しつこい。「ハエが―・くつきまとう」「この写真はバックが―・い」
いやになるほどにすぐれている。
「御心とどめて物宣ふにこそあめれ。―・き人の幸ひなりや」〈宇津保・沖つ白浪〉
いやになるほどに、こまごまといきとどいている。
「れいの―・き御心とはおもへども、えさは申さで」〈夕顔
技芸がすぐれている。
織女たなばたの手にも劣るまじく、その方も具して、―・くなむはべりし」〈帚木
[補説]古くは、いきとどいて完全であるさまを、わずらわしく感じる意と、よしとする意の両面からいった。
[派生]うるさがる[動ラ五]うるさげ[形動]うるささ[名]
[用法]うるさい・やかましい――「人々の叫ぶ声がうるさい(やかましい)」「窓を打つ風の音がうるさい(やかましい)」「ブルドーザーの音がうるさい(やかましい)」のように、不快に感じる声・物音・騒音などには相通じて用いられる。◇「蚊のブーンという羽音がうるさい」など、必ずしも大きな音ではないが、わずらわしく感じられるときは「うるさい」が用いられる。◇また、「うるさい」は「規制がうるさい」「世間がうるさい」「髪が長すぎて、うるさい」「装飾がごてごてとうるさい」など、音以外の不快なものにも用いられる。◇「親がうるさい(やかましい)」「味にうるさい(やかましい)」「時間にうるさい(やかましい)」など、「あれこれ言う」の意味では相通じて使われるが、「やかましい」のほうががみがみ言う度合いが強い感じである。
[類語](1やかましい騒騒しい騒がしいかまびすしいかしましいにぎやか口うるさい口やかましい小やかましい騒然喧騒喧喧囂囂けんけんごうごうけたたましい/(3煩わしい面倒臭いややこしいやかましいくだくだしいうっとうしいこうるさい気詰まり煩雑煩瑣はんさしち面倒しち面倒臭い厄介世話面倒めんどう手数てかず・てすう複雑難しい難儀煩多錯雑錯綜さくそうしち難しい入り組んだ込み入った手が込んだ気が重い気が進まない気乗り薄うんざり億劫おっくう渋る投げ遣り大儀懶惰らんだ横着怠慢怠惰不精懈怠けたい世話が焼ける手が掛かる冗長繁簡ごたごたもつれる入り乱れる紛糾ごっちゃ乱雑雑然

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「煩い」の意味・読み・例文・類語

うるさ・い【煩・五月蠅】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]うるさ・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. いきとどいて完全であるさまをいう。また、その度が過ぎて、反発されたり敬遠されたりするさまをいう。平安時代の例では多くその両面をもった表現になる。
    1. (イ) いやになるほどすぐれている。多くすぐれた人物にいう。
      1. [初出の実例]「上も、とおもほして、御心とどめて物宣ふにこそあめれ。うるさき人の幸ひなりや」(出典:宇津保物語(970‐999頃)沖つ白浪)
    2. (ロ) いやになるほどこまごまとしたところまでゆきとどいている。煩わしいほどよく気がまわる。現代語では、よく知っている、精通している、などというときに多く使う。「ワインにうるさい」
      1. [初出の実例]「武蔵鐙(あぶみ)さすがにかけて頼むにはとはぬもつらしとふもうるさし」(出典:伊勢物語(10C前)一三)
    3. (ハ) こまごまゆきとどきすぎていて煩わしい。気がまわりすぎて感じが悪い。
      1. [初出の実例]「『あやしう昔心地して、あはれなる御声どもかな』とて、いひゐたる事どもは書かじ、うるさし」(出典:落窪物語(10C後)三)
  3. 技芸がすぐれていて、嫌味なほどである。巧者だ。うるせし。
    1. [初出の実例]「立田姫といはむにも、つきなからず、たなばたの手にも劣るまじく、その方も具して、うるさくなん侍し」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  4. いかにもわざとらしくていやみだ。
    1. [初出の実例]「出でてまかりしを、引きとどめて、今日までさぶらはせ給ふ。うるさしかし」(出典:篁物語(12C後か))
  5. ものが多くつきまといすぎて煩わしい。うっとうしい。やかましい。
    1. (イ) 虫とか煙、匂い、髪の毛などまつわりつくものについていう。
      1. [初出の実例]「柴の家のはひりの庭に置く蚊火の煙うるさき夏の夕暮〈藤原顕仲〉」(出典:堀河院御時百首和歌(1105‐06頃)夏)
    2. (ロ) 音についていう。
      1. [初出の実例]「よなきするたにうるさいに、なかなきをはしむるか」(出典:説経節・説経苅萱(1631)中)
    3. (ハ) 話、しゃべり方、あるいは容貌、態度についていう。
      1. [初出の実例]「五度も十度も、その機合の人をもて和を入て、教訓正路にあるべし。片屓贔うるさきものなり」(出典:本福寺跡書(1560頃))
    4. (ニ) 手続きとか、手順についていう。
      1. [初出の実例]「あひのおさへのといふ蒼蠅い事の無代り」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一七)
  6. ( 多く「…するとうるさい」の形で ) めんどうだ。煩わしいことになる。
    1. [初出の実例]「火元だといふと、調べは相当うるさいかも知れない」(出典:或る死、或る生(1939)〈保高徳蔵〉一)
  7. きたない。また、いやな感じ、よくない感じである。〔匠材集(1597)〕
    1. [初出の実例]「うるさき物のしなじな〈略〉てんかん、くつち、くさり物のにほひ、ふるきさかなのれうり」(出典:仮名草子・尤草紙(1632)上)

煩いの語誌

( 1 )ウルは「うら(心)」、サシは「狭し」か。平安時代ではのように相手のすきがない行為や状態に接して心に圧迫を感じて一目置くものの、一方で敬遠したくなる感情をいう。そこから、平安末頃からのような煙や音声に対して感覚的に煩わしい、うっとうしいと思う意が生じ、近代には「…するとうるさい」の形で面倒だ、厄介だの意でも用いられるようになった。
( 2 )の意は「うるさし」の「さ」と「うるせし」の「せ」の字体が混用されたもの。
( 3 )中世に多く「右流左死」の表記があり、そのあて字の意について「江談抄‐三」に次の記事がある。「世以英雄之人右流左死。其詞有由緒。昔菅家為右府。時平為左府。共人望也。其後右府有事被流。左府薨逝。故時人称人望之者右流左死云々」

煩いの派生語

うるさ‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

煩いの派生語

うるさ‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

煩いの派生語

うるさ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

わずらいわづらひ【煩・患】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「わずらう(煩)」の連用形の名詞化 )
  2. 悩むこと。苦しむこと。また、厄介なこと。手数のかかること。心配。苦労。面倒。迷惑。
    1. [初出の実例]「神庫(ほくら)高しと雖も、我能く神庫の為に梯(はし)を造(た)てむ。豈庫(ほくら)に登るに煩(ワツラヒ)あらむや」(出典:日本書紀(720)垂仁八七年二月(北野本訓))
    2. 「わづらひなくて、ただうち遊びて明かし暮らせば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  3. ( 累 ) 苦労の種となるもの。妻子、縁者など面倒をみなければならない者、また、それによる連累。係累。
    1. [初出の実例]「親の累(ワツラヒ)に縁りて断ぜらるるに」(出典:石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 「外に何の係累(ワヅラヒ)もなかった」(出典:末枯(1917)〈久保田万太郎〉)
  4. 病気。やまい。疾患。
    1. [初出の実例]「ゴザヲモ フジャウニ ナシタテマツラバ、イヨイヨ ヲ vazzuraino(ワヅライノ) モトトモ ナラウズ」(出典:天草本伊曾保(1593)狼と狐の事)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例