医食同源
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医食同源(いしょくどうげん)とは、日頃から、バランスの取れた美味しい食事を摂ることで、病気の予防や治療につなげるという考え方である。
名称と歴史
[編集]「医食同源」という言葉は中国の「食薬同源」の思想が1973年で日本に伝われた時、日本人が作った造語である。「医食同源」は2000年代から発想の元になった中国へ逆輸入されている。
初出は1972年、NHKの料理番組『きょうの料理』の特集「40歳からの食事」において、臨床医・新居裕久が発表したもの(NHK「きょうの料理」同年9月号)。これは健康長寿と食事についてのもので、中国に古くからある薬膳の「食薬同源」を紹介するとき、薬では化学薬品と誤解されるので、「薬」の漢字を「医」に代え、拡大解釈したものであると新居裕久は述懐している[1]。
また、同年の1972年12月に『医食同源 中国三千年の健康秘法』(藤井建著)が出版されているが、これは前出の「医食同源」の語彙を転用したものである。その他の使用例では、朝日新聞の記事見出データベースの初出は1991年3月13日であった。また『広辞苑』では第三版には無く、1991年の第四版から収載されていた[2]。
以上のことから考えると、この「医食同源」という言葉は1990年前後にはすでに一般で使われており、その思想も健康ブームなどにより、広く受け入れられてきたものと考えられる[3]。
文化
[編集]- 関連する言葉・文化
- 汝の食事を薬とせよ、汝の薬は食事とせよ。食べ物で治せない病気は、医者でも治せない - ギリシャの医師ヒポクラテス
- 古代ギリシアの医者カリュストスのディオクレスは、夏には食事を温めたり乾燥させるのを止め、冬には冷やしたり湿らせてはいけないと述べている[4]
- 中国最古の医学書『黄帝内経』には、「どんな病気を治療するにせよ、必ず日常の食事についての問診が必要である」「空腹を満たすときには食といい、病を治すときは薬という」という記述がある[5]。
- 中国周の時代の諸制度を記した『周礼』には皇帝に健康を考えた食事を作る食医という制度があった[5]。元朝には、飲膳太医という役職が置かれ、その一人忽思慧が『飲膳正要』を作った。
関連書籍
[編集]- 森昌夫『医食同源のペプチド―やさしい病態栄養の知識』TEN BOOKS、1989年、ISBN 4876660123
脚注
[編集]- ^ 【特別インタビュー】「21世紀の医食同源」刊行にあたって
- ^ 真柳誠「医食同源の思想-成立と展開」『しにか』9巻10号72-77頁、1998年10月
- ^ 大森洋平『考証要集』(文春文庫)には「薬膳」と同様、「そもそも中国語としての意味を成していないという」と書いてある。
- ^ Jutta Kollesch, Diethard Nickel: Antike Heilkunst. Ausgewählte Texte aus dem medizinischen Schrifttum der Griechen und Römer. Philipp Reclam jun., Leipzig 1979 (= Reclams Universal-Bibliothek. Band 771); 6. Auflage ebenda 1989, ISBN 3-379-00411-1, S. 150–157 (Aus den Schriften des Diokles von Karystos: Die gesunde Lebensweise.) und 201, Anm. 2.
- ^ a b 劉, 園英「中国医学の食養生」、北陸大学東アジア総合研究所、2008年3月31日、doi:10.15066/00000393。