髪の毛の約200分の1という世界一細いスパゲッティが開発される
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが、人間の髪の毛のおよそ200分の1という細さを誇る世界一細いスパゲッティを開発したと発表しました。ただし、研究チームが「ナノパスタ」と呼ぶこのスパゲッティは食品としてではなく、新しい繊維として開発されたとのことです。
Nanopasta: electrospinning nanofibers of white flour - Nanoscale Advances (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/na/d4na00601a
Chemists create world's thinnest spaghetti
https://phys.org/news/2024-11-chemists-world-thinnest-spaghetti.html
研究チームは、でん粉ナノファイバーが生体材料や環境技術など様々な分野で有望な材料として注目されているものの、抽出・精製プロセスに多大なエネルギーと水資源、環境負荷となる化学物質を消費することが問題だと指摘。そこで、環境負荷の少ない方法で生成できるナノファイバーを模索していたとのこと。
そこで研究チームは、32℃で温めたギ酸に17重量パーセントの小麦粉を溶かし、4時間加温しました。この過程で、小麦粉中のでん粉が溶きほぐされ、でん粉の水酸基がギ酸エステルに変化します。その後、1時間冷却することで、電界紡糸に適した粘度を持つ溶液を作り出すことに成功。そして、この溶液から平均直径が372ナノメートルの「ナノパスタ」を製造することができました。
ナノパスタは接触角が53度で、水との親和性が高いのが特徴。実験でナノパスタに水滴を落とすとわずか数秒で吸収されたとのこと。
従来だとでん粉製ナノファイバーを製造するには大量の水と電力、さらに複数の化学物質による処理が必要でしたが、今回発表された方法は小麦粉を直接使用することで、それらのプロセスを省略可能。つまり、より環境に優しい製造方法の確立につながるというわけです。
さらに、ナノパスタはシンプルで効率的な製造プロセスなのが特徴。小麦粉とギ酸だけを使用し、温度と時間を管理するだけの比較的簡単な工程でナノファイバーを作製できることが示されました。これは、製造コストの削減や生産効率の向上につながる可能性があります。
加えて、生体適合性と生分解性を持ち、適度な親水性を示すこの材料は、創傷治癒や薬物送達などの医療用材料から、ろ過膜や電極などの環境技術まで、幅広い用途での活用が期待できます。
ただし、研究チームは課題として、紡糸過程での不安定性やファイバーの品質にばらつきが見られること、原料となる小麦粉の粒子サイズの不均一性による影響、装置の目詰まりの問題などを挙げています。また、工業スケールでの生産に向けては、プロセスの最適化や品質管理が必要となります。そして、ギ酸使用についての安全性や環境への影響についても評価と検討が求められます。
研究チームは、課題を解決する方法を見出すことができれば、ナノパスタは環境に優しく新しいナノ材料としてさらなる発展が期待できるとしています。
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