2024 見学会レポート(関西)
2024 見学会レポート(関西)
関東での見学会から1週間後の3月16日(土)に、「牧場で働こう見学会(関西)」が開催された。今年から集合場所を京都駅に変更。雨天開催となった昨年から一転、晴天の下での開催となった。関東の見学会と同様、応募者多数により、抽選により参加者を決定。見学会への期待が大きい参加者が集合時刻前から続々と集まり、定刻に参加者27組36名(同伴の保護者を含む)を乗せたバス2台は、最初の見学先であるのグリーンウッド・トレーニングに向けて出発した。
出発後、同行するBOKUJOB事務局員の自己紹介、BOKUJOB活動の概要説明などが行われた後、参加者も自己紹介と「好きな競走馬とその理由」を発表したが、発表の都度、声が上がるなど、和気藹々とした雰囲気の車内であった。
グリーンウッド・トレーニング
草津パーキングエリアでのトイレ休憩を挟み、京都駅から出発して1時間半後に最初の見学牧場であるグリーンウッド・トレーニングに到着。グリーンウッド・トレーニングの事務所前で白澤統括部長に出迎えていただき、白澤統括部長、スタッフの皆様のご挨拶の後、参加者と保護者に分かれて見学を開始。
参加者班が案内されたのは敷地内の厩舎前で、待っていたのはグリーンウッド・トレーニングに入社して数カ月だというスタッフの方。質疑応答は、参加者とスタッフの年齢が近いこともあり、とても和やかな雰囲気で行われた。参加者からの「グリーンウッド・トレーニングを選んだ理由は」との質問には、「会社の社風や雰囲気の良さや働いている方々の優しさ」との回答があり、グリーンウッド・トレーニングのスタッフ間の仲の良さが伝わってきた。また「働いていて大変だと思ったことは」との質問には、「社員として責任が伴うと、馬に接する意識が変わる」との回答があり、特殊と思われる牧場での仕事に関しても、考え方は一般的な仕事と変わらないと感じた。
また保護者班は、事務所から1㎞程度の距離にあるグリーンウッド・トレーニングの独身寮『蹄寮』を見学。バスに乗り込み3~4分ほど走ったところで見えてきたベージュ色の立派な建物が『蹄寮』である。1~2階は男性専用の居室、3階は女性専用の居室になっており、食堂と洗濯室は共用で、各居室にはユニットバス・エアコンが設置されているなど、生活には欠かせない設備は完備しており、保護者の方も安心して子供を送り出すことができる施設であると感じているようであった。洗濯室にはトレーニング機器が設置されていたが、洗濯の順番待ちの間に、基礎トレーニングを行うために設置された機器とのことで、スタッフに向けた配慮が行き届いているように感じた。
施設見学の後、参加者は独身寮見学を行った後に保護者と合流して、白澤統括部長との質疑応答に。その際に、同社のパンフレットをいただくとともに、白澤部長から参加者に対して「牧場の仕事は1日や2日程度では解らない。3~4日でようやく仕事の端緒が解り、1週間で全容が何となく理解できる」との説明があり、参加者よりも就職経験がある保護者の方が、腑に落ちた様子で大きく頷いていた。
その後、2台のバスにそれぞれ乗り込み、白澤部長やスタッフの皆様に見送られ、次の目的地に向けて出発。途中で「信楽陶苑たぬき村」で昼食を。昼食後には、参加者が同行したBOKUJOB事務局員に対して、牧場就業や進路について相談している光景も見られた。
信楽牧場
昼食後に親しくなった同世代の参加者同士で談笑したり、事務局員から情報収集したり、参加者が思い思いに昼食休憩時間を過ごした後、2カ所目の見学牧場の信楽牧場へ出発。事務局員もこのまま順調に見学会が進行すると思っている最中、信楽牧場に向かう途中でまさかの交通事故に伴う渋滞に遭遇。
一向に前進しない車内では、同行の事務局員によるBOKUJOB 活動に関する説明やBOKUJOB YouTubeチャンネルの牧場紹介動画の上映を実施。また2号車では、同乗していたBOKUJOB 相談員で、現在は育成牧場の代表者でもある糸数氏が、牧場就業や進路に関する質疑応答コーナーを即席で実施。参加者からの「良い馬だと思う瞬間はどんな時ですか」「牧場で一人前になるにはどのような技術が必要ですか」「牡馬・牝馬の育て方に違いはあるのですか」などの質問に対して、時には真摯に、時にはジョークや“牧場あるある”を交えて回答いただき、渋滞解消までの約1時間は、参加者や保護者にとって、貴重な時間であったと思われる。車内では、そうした時間を過ごしつつ、定刻から1時間遅れて信楽牧場に到着。
到着後、出迎えてくれたのは信楽牧場の中内田代表取締役会長。最初に信楽牧場の広大な敷地にある施設を見学するため、中内田会長の説明を聞きながら、調教用の周回コース、上厩舎や牧草地などの施設をバス移動により見学。車窓から見る800mの調教用の周回コースの壮大さとご自身で造られたことに、参加者は驚きを隠せない様子であった。
厩舎地区に到着後、1号車グループは中内田会長が、2号車グループは信楽牧場での勤務経験もある糸数氏が、それぞれを引率して厩舎と調教コースを見学。周回コースでは、砂と一緒にゴムチップを混ぜることで、負荷をかけた調教を行うことができるという利点があるとのことで、「砂とゴムチップを混ぜているのは信楽牧場の拘り」と語る中内田会長の言葉にも熱が入っていた。
施設見学の後は、中内田会長が直接回答する質疑応答の時間に。最初の質問の「牧場に就職するに当たって準備した方が良いことは」に対して、中内田会長は「なるほど」と一言呟くと、「朝の生活に慣れることですね」と笑いながら回答。中内田会長は続けて、「自分も過去は、若さに任せて徹夜明けで仕事をしていた。年齢とともに無理が効かなくなってくる一方で、朝の仕事は絶対にできるよう頑張ってきた。夜型の生活を送っている方が多いかもしれませんが、牧場では朝に行う仕事が多いので、朝はちゃんと起きて、朝型の生活に慣れることが一番」と説明し、再度笑顔になった。そんなユーモア溢れる回答を受けて、質疑応答会場は参加者たちの笑い声に包まれた。
そんな和やかな雰囲気のなか登場したのは、湖南馬事センター出身で信楽牧場に勤務する中川さんと湖南馬事センターの研修生である石井さん。参加者は、自分の未来の姿を重ね合わせながら、同世代の二人の話を真剣に聞き入っていた。
最後に、中内田会長は「努力ができる人間は必ず成長するし、努力を怠らなければ何とかなる。実力や才能に溺れてしまう人間は必ず“ぼろ”が出てしまう」との言葉で質疑応答を締め括った。この言葉は、牧場での仕事に関してだけではなく、社会人としての在り方にも通ずるメッセージで、参加者はもちろん保護者も真剣な表情で聞いていた。
質疑応答が終了した後、一同はバスに乗り込み、中内田会長とスタッフ方々の見送りを受けて、最後の見学先であるノーザンファームしがらきに向かった。
ノーザンファームしがらき
信楽牧場からバスに乗り込み、数分でノーザンファームしがらきに到着。案内をご担当いただくのは昨年と同じく山本氏。目の前に広がる全長800mの坂路コースを前に、敷地面積が28ヘクタール(東京ドーム6個分)に及ぶ広さであることなど、ノーザンファームしがらきについての説明が行われた。到着前に車窓から見えた風景から広大な施設と感じていたが、改めて東京ドーム6個分との説明に、参加者一同その壮大さを再認識した様子であった。また、眼前に広がる坂路コースは、一見するだけでも勾配と感じたが、高低差は何と約40mにもなるとのことであった。
山本氏からは、ノーザンファームの組織や牧場施設の説明とともに、保護者の方も気になる福利厚生の説明に。設備が整った独身寮の説明のほかに、休暇制度の説明もあり、時間単位の有給休暇制度も取り入れているとのことであった。またサッカーや釣りなど、社員のサークル活動を支援する制度を設けているとのことで、就労意欲が高まる職場環境が整っているように感じた。
その後、坂路コースをバックに、参加者は記念撮影を行った後、バスで厩舎に移動。2班に分かれ、厩舎内を見学。若手の厩舎スタッフの方々に施設案内を担当していただいたが、参加者は馬房内の現役競走馬の姿を好奇心に満ちた眼差しで追いかけていた。
厩舎見学の後は、本日最後の質疑応答に。参加者から「騎乗スタッフには体重制限がありますか」という質問あり、スタッフの方から「騎手ではないので、体重はそれほど気にしなくて大丈夫です」との回答。また「仕事をしていて大変だと思った瞬間は」との質問には、「入社時ですね。最初は何も分からなかったので、大変でした」と回答があり、続けて「作業に慣れていくと、これまで大変だと感じていた作業も、大変だと感じなくなっていました。この仕事は、やる気があれば、できる仕事だと思います」と、牧場就業を検討する参加者の背中を後押しするかのような言葉で質疑応答を締めた。ノーザンファームしがらきでの見学もあっという間に終了となり、山本氏とスタッフの皆様に見送られ、ノーザンファームしがらきを後にした。
京都駅までの帰路では、ノーザンファームしがらきなどからご提供いただいたグッズの当選者を決定するじゃんけん大会を行ったり、6月1,2日にJRA東京競馬場で開催するメインフェア、10月26,27日にJRA京都競馬場で開催予定の関西フェア、例年、夏休み期間に開催している参加型イベントの案内を行ったりして、午後5時45分頃に京都駅に到着し、解散となった。
最後に、今回の見学会にご協力いただいた各牧場の皆様に厚く御礼を申しあげます。ありがとうございました。